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消防職員のための法令解説

 

成年後見、保佐、補助制度(一)

 

一 成年後見制度の改正

平成一一年一二月八日、民法の一部を改正する法律が公布され、平成一二年四月一日から施行された。

この改正は、従前の禁治産制度及び準禁治産制度を改正し、後見及び保佐の制度に改め新たに補助の制度を、とりいれたものである。

この改正の一つとして成年後見制度がある。

 

二 成年後見制度に関する民法改正の理念

従前の禁治産制度は、判断能力の不十分な者を保護する制度であるが、保護制度として不十分な点もあり、また、本人の自己決定権を尊重する必要等から、成年後見制度の民法改正が行われたものである。

 

三 従前の禁治産制度の問題点

従前の禁治産制度では、1]すべての法律行為について、本人の行為能力を制限するため、本人の活動が、極端に制約される。2]後見人が、本人に対して、不適切な行為をして、本人が泣かされることがある。3]禁治産宣告手続きに、手間がかかる等の難点があった。

 

四 民法改正の内容

民法改正の内容の要点は、次のとおりである。

(一) 従前の禁治産制度及び準禁治産制度を、後見及び保佐の制度に改め、新たに、軽度の精神上の障害がある者を対象とする補助の制度を創設した(民法七条、一一条及至一四条)

(二) 後見開始の審判を受けた者(精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者)を、成年被後見人とし、これに成年後見人を付することとした(民法七条、八条)。

(三) 成年被後見人のした法律行為であっても、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、取り消すことができないこととした(民法九条)。

(四) 成年後見人は、成年被後見人の財産に関するすべての法律行為について、代理権を有する(民法八五九条)。

(五) 保佐制度については、保佐開始の審判を受けた者(精神上の障害により、事理を弁識する能力が著しく不十分な者)を被保佐人とし、これに保佐人を付することとした(民法一一条、一一条の二)。

従前の準禁治産者に浪費者が入っていたが今回の改正で、浪費者制度がなくなっていることに注意を要する。

(六) 被保佐人は、重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為、遺産分割等の一定の行為をするには、保佐人の同意を得なければならない。

日用品の購入その他日常生活に関する行為については、保佐人の同意を得ることを要しない(民法一二条一項)。

(七) 保佐人の同意を得なければならない行為を、同意なく行ったときは、保佐人に取消権が与えられた(民法一二条四項、一二〇条一項)。

(八) 特定の法律行為について、一定の場合、保佐人に代理権を付与することができることとした(民法八七六条の四)。

 

全国消防長会顧問弁護士 木下健治

 

 

 

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