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(3) 感電の状況

現場指揮者は、要救助者の有無についての情報が得られないため、検索と消火の同時進行を指示した。

救助隊員は、援護注水を受けながら玄関及び南側ベランダより屋内進入した。隊員は濃煙熱気のため排煙口を確保しようと「北側窓ガラスの破壊」を考え、建物下の安全確認を行うため濡れた革手袋で窓の手摺りに手を掛けた。

その瞬間感電し、筋肉が硬直して身体が動かなくなり、目の前がまっ白になった。更に、声もでない状態が続いた。

その後、目は見えるようになったが言葉を発するも声にならず、手は窓の手摺りから離脱することもできない状態でもがいていると、手摺りから滑るように離れた。

しかし、意識は有ったが立っていることができず、その場に倒れこんでしまった。

救助隊員は、屋内検索を行うなかで玄関上部に設置された分電盤のブレーカが切れているのを確認しているにもかかわらず、感電したものである。

なお、感電した救助隊員は、他の隊員により救出され病院で検査した結果、軽症ですんだ。

 

四 感電の原因

原因調査を実施して、救助隊員の感電原因について調査を行った。その結果は次のとおりである。

電気が流れていた点については、住戸内の配線はブレーカスイッチを介しているためONにすると電気は流れる。OFFにすると電気は流れないが、電力量計から分電盤までの一次配線は、常時電圧が印加されている。この配線が分電盤裏で火災熱を受け被覆が焼損した後、芯線が壁の中に敷設された配筋へ接触したために電気回路が形成され通電状態になったものである。

また、窓の手摺りに電気が流れていた点については、手摺りの材質は鉄製で強度をとるため躯体中の配筋と接合されており、電気は配筋を伝わり窓の手摺りに通電していたものである。

 

おわりに

本火災においては、救助隊員が分電盤のブレーカが切れているのを確認しているにもかかわらず、感電により負傷をしてしまったことが残念でならない。しかし、隊員が二階からの転落事故につながらなかったことは不幸中の幸いであった。

今後、警防対応をはじめとする各種対応において更なる安全管理の徹底をしていかなければ成らない。(原邦男)

 

救急・救助

中洲に孤立した釣り人の救助

岩船地域広域事務組合消防本部(新潟)

 

はじめに

当消防本部は新潟県の最北端に位置し、村上市、関川村、荒川町、神林村、朝日村、山北町、粟島浦村の一市二町四村で構成され、昭和四九年に発足しました。

管内総面積は、一、四八三・六九km2で新潟県総面積の一一・八%を有し、人口八三、九〇七人の防災治安を一本部一署五分所、職員数一二一人の体制で担っています。

管内は、雄大な景観をもって広がる朝日、飯豊山系、そこを源とする三面川と荒川、そして名勝「笹川流れ」を有する日本海に囲まれ、豊な大自然に抱かれています。

この、人に優しい自然も、時に牙をむき我々に災いをもたらします。ここで紹介する事例も普段人々の生活を潤している川が突然豹変し、釣り人を襲った事例であります。

 

 

 

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