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糖尿病にかかりやすい条件として慈恵医大の池田先生は次の七つの質問で合計六点以上の人は要注意とされています。

 

(1) 血縁者に糖尿病がある…3点

(2) 20代前半より体重が10%以上増えている…2点

(3) 血縁者に肥満、脳卒中、心臓病(狭心症など)がある…1点

(4) 砂糖や脂肪分を好んで食べる…1点

(5) 車が足がわり(運動不足)…1点

(6) アルコールをよく飲む…1点

(7) ストレスが多い(せっかち、イライラ)…1点

 

膵臓から分泌されるインスリンは糖を筋肉やその他の組織に送り込む際に不可欠なホルモンです。糖尿病とはインスリンの分泌量が少ないか、その作用が不十分となり(インスリン感受性の低下)、血液中の糖がうまく利用できなくなる病気です。したがって治療しないと体に栄養がいかないのですから、どんどん痩せてきます。また、慢性的な高血糖のため血管に病変を作って、神経、腎臓、眼(網膜)を障害したり、動脈硬化を進展させ、脳卒中や心筋梗塞という重大な合併症をおこしてきます。つまり、糖尿病とは単に血糖値が高いということではなく血管を侵す病気であることを知ってください。

日本人の糖尿病のほとんどは遺伝、生活習慣、肥満、ストレスなどが絡み合って発症してきます。

暴飲暴食、不規則な食生活、運動不足はインスリン感受性の低下を招きます。この時期はインスリンの分泌は、むしろ過剰である事が多いようです。慢性的なインスリン分泌過剰が続けば、やがて膵臓は疲弊し分泌低下を来たしてきます。

したがって糖尿病は、インスリン分泌が必ずしも低下しているわけではなく、インスリンの感受性が病状に大きな影響があるということです。職場の検診で血糖値という項目があると思います。これが糖尿病をチェックする第一段階です。朝起きて、何も食べない、飲まない状態での血糖を空腹時血糖といい、七〇〜一一〇mg/dlなら正常範囲です。食事により摂取された栄養は消化管から血液中に取り込まれます。それで食前は血糖値が低く、食後一〜二時間で急上昇します。しかし、一日のうちで、食後の血糖が高いときでも二〇〇mg/dlを越すことはありません。一九九九年の日本糖尿病学会の診断基準によると空腹時血糖が一二六mg/dl以上、食後の血糖が二〇〇mg/dl以上の人は糖尿病と考え、治療を開始しなければなりません。

糖尿病の治療と予防はまずライフスタイルの改善にあります。

肥満のある人は、ともかく減量することが必要です。現在の日本人の平均エネルギー摂取量は一日約二〇〇〇kcal程度です。標準体重×三五kcal位を目安に自分の適正食事エネルギーを計算して下さい。

しかし、ただ食事量を減らし、体重を減らせばいいというものではありません。インスリンの感受性は体脂肪が多いと低下し、運動すると改善します。体脂肪率では男性二〇%、女性三〇%以下になるように努めますが、体脂肪は食事制限だけではうまく減りません。運動によって体脂肪を燃やしていくことが大切なのです。さらに運動そのものがインスリン感受性を改善するので、運動療法の重要性が理解できると思います。

まず一日一時間(およそ一万歩)、歩いてみてください。ゆったりとした有酸素運動は心身ともに最高の運動です。運動によって得られたインスリン感受性の改善は二〜三日続きますから、週三回程度の有酸素運動が充分な効果をもたらします。

 

六 おわりに

生活習慣病の概要と治療について簡単に解説しました。健康維持のための資料の一つとしていただければ幸いです。

皆様のさらなる御活躍を期待して終わらせていただきます。

 

 

 

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