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また減塩による降圧効果は大きく、一日の食塩摂取量を六g以下にするのが理想的ですが、日本人の平均食塩摂取量は一日一二gであり、長期間続けるには一〇g以下とするのが現実的でしょう。日頃から薄味に慣れることが大切です。また、アルコールを長期間多量に摂取すると血圧が上がることが知られています。一日の量はビールでは七二〇ml、日本酒一八〇ml、ウィスキー六〇ml、ワイン二四〇ml程度が良いようです。

運動療法が降圧効果を持つことは古くから報告されてきました。一週間に三〜四回の頻度で有酸素運動を一ヶ月続けることによって、およそ一〇〜一四/五〜一〇mmHgの降圧効果があります。さらに運動は正常血圧者に対しても高血圧発症を抑制することが認められています。

 

表1 成人における血圧の分類

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四 高脂血症

高脂血症とは血液中に脂質が異常に増加した状態を示しています。臨床的には主にコレステロール、中性脂肪で評価しますが、健康診断で聞き覚えがあると思います。これらは高血圧、糖尿病と並んで動脈硬化を促進する作用があります。

コレステロールの中には末梢組織の余分なコレステロールを肝臓に運んで処理をするHDLコレステロールと、コレステロールを末梢組織へ運ぶLDLコレステロールがあります。したがって、HDLコレステロールは動脈硬化を抑制する作用を持ち、善玉コレステロールと言われる所以です。一方LDLコレステロールは悪玉ともいえます。正常値は総コレステロール一五〇〜二一九mg/dl、HDLコレステロール四〇〜九〇mg/dl、LDLコレステロール七〇〜一三九mg/dl、中性脂肪五〇〜一四九mg/dlとされています。

高脂血症の治療も食事療法、運動療法、薬物療法が三本柱です。特別に高値である場合は別として、まずは食事、運動療法を実施します。コレステロールが高い場合は、鶏卵、魚卵、レバー、バターを控えること、中性脂肪が高い場合は飲酒と甘いもの(砂糖)を制限しなくてはなりません。高脂血症は運動療法の効果が期待できます。しかし、総コレステロールはあまり下がりません。それは運動によって、HDLコレステロールが増加し、LDLコレステロールが減少するので全体としては変化が乏しくなります。総コレステロールが変化しなくとも善玉が増え、悪玉が減れば良い方向であると判断できます。

HDLコレステロールは男性より女性が、また運動習慣のない人よりある人の方が高値です。同じスポーツマンでも重量挙げなどのパワー型のスポーツより、マラソンやジョギングのような持久型のスポーツをしている人がより高い値を示すことが報告されています。一方、中性脂肪については運動による変化が最も顕著であるとされています。比較的ゆっくりとした有酸素運動を一日三〇〜四〇分、週に二〜三回、実施してください。これによって二〇〜三〇%の中性脂肪の低下が得られます。運動開始後一週間ぐらいで効果が出てきます。しかし、運動中止後三日でこの効果は消失してしまいます。ですから週二〜三回は実施する必要があるわけです。

 

五 糖尿病

糖尿病の有病率は一九八五年から急増し、今後も増加し続けると考えられます。特に中高年の皆さんは、正しい知識を持つことが予防の第一歩です。

 

 

 

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