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ライフスタイルの改善をめざして

横浜市スポーツ医科学センター 内科診療科長 高田英臣

 

一 はじめに

昔から、よく体を動かす人は丈夫で長生きであるといわれてきました。医学的にもこれを証明する論文はたくさんあります。

最近は、公園でウォーキングやジョギングを、またスポーツクラブで汗を流す人が多くなりました。人の意識が、自分の健康を自分で守ろう、ゆとりのある生活をしようと変わってきました。

生活習慣病は以前、成人病と呼ばれていたものですが、その成因には生活習慣(ライフスタイル)が大きく関与すること、また治療が医師から患者主体になったことが認知され名称が変更されました。

生活習慣病の予防・治療にはライフスタイルの改善があげられています。ライフスタイルの改善とは、食生活の改善(食事療法)、運動習慣をつけること(運動療法)を指します。

これからはゆとりのあるライフスタイルで人生を楽しむことが大切です。

 

二 運動と血液循環

人体の血液循環の源は強力なポンプ作用を持つ心臓です。心臓は筋肉でできた臓器で、一日に一〇万回の収縮・拡張運動を繰り返し、体全体に血液を送っています。心臓が一回収縮すると八〇ml位の血液が駆出されます。安静時の心拍数は七〇回位ですから、一分間に八〇ml×七〇回で五・六lの血液が供給されているわけです。これを心拍出量といいます。

運動を始めると安静時には静脈系に貯蔵されていた血液が動員され、循環血液量は五〜七倍に増加します。運動強度の上昇に伴い、心拍出量は増加していきますが、やがて頭打ちになります。ここが、人がもって生まれた運動能力の限界です。

運動によって血液は必要な臓器に多く供給されるようになります。運動に関係がない腹部の臓器への血液量は、最大運動時には安静時の四分の一に減少します。運動で最も活躍する骨格筋への血液量は、最大運動時には安静時の二〇倍にまで増加し、体全体の九〇%の血液が筋肉に集中します。またポンプ作用の源である心臓の筋肉には、安静時の三倍の血液が供給されます。

脳血液量は体の活動には関係なく常に一定に保たれています。人間の体は運動に効率よく、うまく対応できるよう作られているのです。

 

三 高血圧

高血圧とは、血圧が持続的に上昇している状態を示します。一九七八年の世界保健機構(WHO)の基準では、収縮期血圧一六〇mmHg以上かつ/または拡張期血圧九五mmHg以上を高血圧、収縮期血圧一四〇mmHg以下かつ拡張期血圧九〇mmHg以下を正常血圧とし、いずれにも入らないものを境界型高血圧としています。

最近では、二〇〇〇年に日本高血圧学会が新基準を出しています(表1)。

これは正常が至適、正常、正常高値の三つに、また高血圧は軽症、中等症、重症の三つで計六段階に分類されています。正常高値は将来には正常群より脳卒中、心臓病、高血圧の発生頻度が高くなるとされています。

この基準では収縮期血圧と拡張期血圧がそれぞれ独立していますが、異なった分類に属する場合は重い方の分類になります。

高血圧の九〇%は遺伝因子に、過剰な食塩摂取、飲酒、また運動不足、肥満などの生活・環境因子が加わって発症します。

高血圧の治療は食事療法として肥満を改善すること、減塩することが大切です。肥満者ではカロリー制限を行い、標準体重を目標に減量します。減量により降圧効果が得られ、さらに高血圧発症を抑制することが分かっています。

 

 

 

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