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鹿角広域行政組合消防本部(秋田県)

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当消防本部は、北東北三県(秋田、青森、岩手)のほぼ中央に位置し、鹿角市と小坂町の一市一町で構成されている。南は八幡平、北は十和田湖の国立公園をひかえこれに連なる緑の山々と清れつな河川や豊かな温泉郷に恵まれ、その自然の豊かさは「青垣をめぐらす鹿角の里」の言葉に象徴されている。管内には年間三〇〇万人の観光客が訪れる国立公園十和田八幡平を擁し、東北縦貫自動車道のインターチェンジが三箇所設置され青森、八戸、弘前、盛岡などの各都市とは一時間経済圏である。また、秋田の冬の名物キリタンポ鍋や秋田犬は鹿角が発祥の地である。

常備消防は、以前は鹿角市消防本部、小坂町消防団常備部で対応していたが、東北自動車道の全面開通、大型観光地への進展等、広域的な消防対応が求められ平成六年六月から広域行政組合の業務に移管し、一本部一署二分署一分駐所消防職員数九六名、一〇九三名の消防団員とともに、管内面積八八五km2、人口四七、七八三人の安全と暮らしを守り日夜災害のない地域づくりに努めている。

★救命手当普及推進かづの

心肺機能停止者に対する住民の救命手当が社会復帰に大きな効果をもたらしている。秋田県は、三年計画で救急救命率全国一を目標に推進しており、当本部でも生産人口の三〇%、管内九、五〇〇人の普通救急救命講習受講修了を目指し、四名の救急救命士を先頭に講習会を重ねている。講習会では意欲的な若手救急隊員自作自演のパフォーマンスを交えてユニークな講習として、人気があるため地元の演芸会等にも出演依頼が多い。

★地域の活性化に貢献

今年一〇月に開催された第一四回県消防職員駅伝競争大会では、各区間とも昨年に続きラップタイムを刻み完全優勝に輝き、鹿角チーム(写真)は四連覇を達成。毎年三月に東京で開催される皇居一周全国消防駅伝大会にも出場、昨年は第九位、今年は第五位と健闘。因みに世界陸上選手権女子マラソンで優勝し、アトランタオリンピックに出場した浅利純子選手は、地元花輪高校の卒業生である。

積雪地帯である当地方は、排除雪は大変な重労働であり、時には危険を伴う。職員は一人暮し老人世帯を対象に休日を利用してチームを組み、屋根の雪降ろし、玄関や裏口の排雪を行い、家屋の倒壊防止と避難口の確保に当たっている。また、職員には各種スポーツの公認審判員、スキーの指導員として活躍している者が多く、管内市町の行事イベント、お祭りなどに積極的に参加して交流を図っており、地域の活性化にさまざまな形で貢献する姿に信頼も厚い。

★土砂災害を教訓に

平成九年五月に八幡平熊沢国有林内において大規模な土砂災害が発生し、澄川・赤川温泉一六棟が流出した。当時危険を察知した鹿角市と消防の判断で温泉宿泊客や従業員を早く避難させたため、人的被害はなく、大事に至らなかった。その後も消防職員、消防団員その他の関係機関が二四時間体制で警戒にあたり、終息まで長時間を要した。当時避難を誘導した職員は、「一瞬の判断の迷いが取り返しのつかないことになる。災害の避難時期の難しさを話しながら自然は恐い」と話されていた。

★若手職員の成長に期待

最後に児玉消防長は、「若い人に話をさせる機会を多く持つことで、消防の現状、将来の展望などを意識させ、研修、訓練などを通じて、個々の能力アップ、全体のレベルアップを図り、若い人の柔軟な頭脳と適応力に期待し、胸襟を開いて、若手職員との交流を特に大切にしたい。また、高齢者の比率が高いなかで、住民のより高度な救急サービスへの期待感が高く次の高規格救急車を一日も早く配備、救急救命士を多く育てたい。」と結ばれた。

(飯塚文治)

 

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