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トンネル内の通信対策

災害現場において通信は、困難な場合がしばしば発生するが、もし火災や救助活動が地下道、鉄道のトンネル、坑道、密閉区域等で発生したとすれば、通信は一層困難となる。

一九九九年三月二四日、モンブラン・トンネル内でベルギーのトラックから出火し、四五人以上の死者を出した火災で、1]トンネル内を走行中の一般人、2]調査、報告及び処置のために出動したトンネルの従業員、3]消火及び救助作業のために出動した消防隊員、4]困難な状況に陥った消防隊員を救出するために出動した消防隊員の生死が通信のいかんにかかっていたので、通信がいかに重要な役割を果たすかを示した。

このような状況においては、消防隊が使用している通常のUHF携帯無線機や車載無線機はあまり役に立たない。無線の伝播はトンネルの規模、トンネル内部に組み込まれた鉄の量及び使用する無線機の周波によって決まるもので、標準のUHF無線機の場合有効距離は直線で四〇〇から九〇〇メートルであり、角を曲がると途端に通信は切れてしまう。

通常の鉱山やトンネルの作業においては、五〇〇メートル位の間隔で増幅して無線信号を送るリーケージ・ケーブル、(モンブラン火災の時に使われた)電話設備あるいは地中を通過する無線機などが使われている。

しかし、災害時に無線機を使用するには、1]トンネル内にこれらの設備が設置されていない場合がある、2]火災やその他の災害でケーブルが破損しやすい、3]リーケージ・ケーブルの設置は高価である、4]緊急事態に適用することは困難である、という問題がある。

その解決策として、現在鉱山やトンネルで使われている次のような通信設備が使用できるものと思われる。

(1) ブースター・ボックス又はアクティブ・リピーターと呼ばれる可搬式装置を適当な間隔と曲がり角の先端に設置すると、標準の無線機の有効距離を延ばすことができる。

(2) 低周波のエムコム装置の丈夫な細いケーブルを延長し、どこにでも送受信器をクリップで留めて通信することができる。ケーブルは命綱としても役立つ。

(3) 有効距離は一〇〇メートル以内であるが、撚り合わせケーブルを延長してコンスぺースと呼ばれる送受信ヘッドフォンを接続する。これも命綱として役立つ。

(4) 地中を通して通信する、ケーブルを必要としないアンテナ付きの無線機がある。しかし、その上部の地上にループ・アンテナを設置する必要があるので、緊急の場合ビル等の立て込んだ地域で使用することは難しいかもしれない。

(5) 呼吸器に取り付ける超小型のスピーカー・マイク装置がある。プレス式と音声作動式の装置があるが、後者は荒い呼吸や外部の騒音で誤作動する恐れがある。

(文責 大野春雄)

 

 

 

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