
図5 発生箇所及び容器交換時の気密試験実施フロー
五 防災資機材について
(1) ガス検知器
災害時の消火作業や二次災害防止のためには、何のガスが漏洩しているのかをポータブル式のガス検知器を使って調べる必要がある。ガス検知器を選定する条件を下記する。
1] 消耗品がなく長期間安定して使用できる。
2] 応用範囲が広い。
3] 毒性ガスの許容濃度付近が測定できる。
上記から、まず種々の危険性を持ち半導体産業で使われる水素化物(モノシラン、ホスフィン等)と可燃性ガス(水素、LPG等)を測定できる熱線型半導体式センサ(図6参照)を常備したい。重大なガス事故に酸欠があげられることから、ガルバニ電池式酸素計が必要である。本方式は、セルを一〜二年(メーカによる)で交換することと、使用前に電気で校正する必要がある。その他、ガス名を確定する場合にはガス検知管が便利である。地域に関係するガス及び反応して発生が懸念されるガスと濃度に対応した検知管を備えるとよい。

図6 鳴り止みポイントからの戻し目盛量と各ガスの鳴り始め濃度との相関
(2) 除害
高圧ガスの種類が多く、その危険性も様々であり、除害については、高圧ガスの専門家で組織した都道府県毎の防災協会に依頼するとよい。消防と聞くと放水のイメージが浮ぶ。放水とガスについての留意点は、塩化物やフッ化物は、加水分解してそれぞれ塩化水素とフッ化水素になる。水に溶解するガスとしては、塩素、アンモニア、塩化水素、フッ化水素が挙げられ、噴霧放水すれば拡散を防止することができるが、ガスが溶解した水の二次、三次災害を考慮する必要がある。
(3) 防災機工具
ガス漏洩を止める方法には、木栓や鉛線を孔部に打ち込むとか、ゴムや樹脂類を線や結束治具で押さえつける方法がある。容器からのガス漏洩時には、防災キャップを取り付けて、安全に処理できる設備のある場所に移動する。この場合は図7に示すようにキャップ内に圧力が加わらないようにする。容器及び弁に損傷を受けている場合には、耐圧筒に収納して移動する。これらの処置は、組織と経験が必要であり、専門家の指導、作業を依頼する。

図7 防災キャップの使い方
(4) 保安防災教育と訓練
高圧ガスは、あらゆる場所で大量に使われており、防災知識の手引きに、各種高圧ガスの性質と正しい取り扱い方法を加える必要があり繰り返して関係に教育するとよい。一方、災害対策には、スピードと正確さが要求されることから、実習、訓練が大切であり、高圧ガスの災害事例を消防という見地で解析して、正しい処置、行動を組み立てて訓練に反映させるとよい。被害については、問題が大きいが、爆発、燃焼については、設備に対応した訓練が可能と考えられる。例えば、モノシランの爆発実験や火炎を見ることで、災害場所での判断が的確に行えるようになると考えられる。
六 後書き
消防と高圧ガスは、保安、防災と密接な関係にあり、それぞれの能力を補い合うことでの相乗効果は大きく、更に関係を強める誓いを込めて、微力ながら本書を書かせて頂きました。世の中から、不幸な災害をなくすことができるよう頑張りましょう。
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