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許容濃度(ACGIH TLV-TWA)とは、一日八時間、一週四〇時間の正規の労働時間中の時間荷重平均濃度として表され、大多数の労働者はその条件に連日繰り返し暴露されても健康に悪影響を受けないと考えられる濃度のことである。高圧ガス保安法では許容濃度二〇〇ppm以下のガスを毒性ガスとしている。

表1によく使用される工業ガスの性質を示す。

 

三 容器と貯槽の構造

(1) 高圧ガス容器

容器は、輸送形態、使用条件等によって、内容積が数リットルのものからタンクローリまで多種多様である。またその構造上1]継目なし容器、2]溶接容器、3]超低温容器等に分類される。「継目なし容器」は胴体部分に継目がないことからこのように呼ばれており、主として、酸素、窒素、水素、アルゴン等の圧縮ガス及び炭酸ガス、塩素等の液化ガスの充てんに使われる。「溶接容器」は、LPガス、フロン等の液化ガスの他、アセチレンガスの充てんに使われる。アセチレン容器は、多孔質物を充てんし、これにアセトン又はジメチルホルムアミドを湿潤させている。「超低温容器」は内槽と外槽とで構成され、内外槽間は真空引き等の断熱措置が講じてある、低温の液化ガス(液化酸素、液化窒素、液化天然ガス等)を充てんする容器である。集結容器には、カードルと大型集結容器がある。「カードル」は、継目なし容器(内容積四七L等)を六〜三〇本程度に枠組みしたもの、「大型集結容器」は長尺容器(内容積四〇〇L、七〇〇L等)を十数本に枠組みし車両に搭載したものであり、トレーラという名称で呼ばれ圧縮水素等の大量輸送に使用される(図1)。「タンクローリ」は超低温液化ガス等を充てんする容器と当該液化ガスを荷おろしするための設備を車両に固定した輸送車をいう。

(2) 貯槽

貯槽には圧縮ガスを貯蔵するもの、超低温液化ガスを貯蔵するものがある。液化酸素、液化窒素等は、コールドエバポレータ(CE)と呼ばれる超低温貯槽、弁類、計器類等で構成される設備で貯蔵・消費される。

 

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図1 カードルと大型集結容器

 

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図2 アセチレン容器弁構造

 

四 事故事例

(1) アセチレン容器発火事故

平成一一年六月製鉄所構内の作業場で鋼材切断作業中にアセチレン容器から出火、倉庫一〇〇m2全焼、アセチレン容器一六本、酸素容器二四本等が火災により損傷する事故が発生した。事故原因は、アセチレン容器に逆火防止器が装着されていなかったこと、ガス切断器の不調に気付かず使用したこと、更にアセチレンを容器置場(倉庫)に置いたまま使用したため、容器置場内の他の容器等に被害が拡大したものである。容器弁には容器内圧力の異常上昇による容器の破裂を防ぐために、破裂板、ヒューズメタルで構成される安全装置が付属している(アセチレン容器は、容器の肩部にも安全装置が付属している)。この事故では、逆火した容器から出火、容器置場の火災により他の容器が過熱され安全装置が作動したためである。

容器置場の火災時には周囲の状況ならびに着火、火災、漏洩状態等を正確に把握し、毒性ガスによる中毒、可燃性ガスによる爆発、容器の破裂、その他の危険に十分注意して「1]着火ガスの種類を確認し、できる限り容器弁を閉じて可燃性ガスの供給を断つ(アセチレン容器に逆火した場合は、容器を安全な場所に移動し容器弁を開き内部のガスを放出する)。2]火炎が激しく近づけない場合は、安全な位置から容器に注水冷却し、火炎の拡大をできる限り防ぐ。3]可燃性ガスが噴出して燃えている間は室内その他ガスの滞留の恐れのある場所では、ガスの噴出を止めて火を消す以外はその火炎を消さない(付近に可燃性ガスが溜まり再着火・爆発することがある)。4]他の容器へ災害が及ぶ恐れのある場合は速やかに安全な場所に搬出する。5]搬出が不可能な場合は、容器に注水して、容器の破裂及び安全装置からのガスの噴出を防ぐ。」等の措置を行う。

 

 

 

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