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高圧ガスの危険性、事故事例及びその対策

日本酸素株式会社技術・開発本部技術管理部 三宅博之・田村寿美子

 

一 はじめに

空気は私たちが生きて行く上でなくてはならないものである。また空気を分離して得られる酸素、窒素、アルゴンを始め、種々のガスが鉄鋼、半導体を始め、多くの産業に利用されている。これらのガスは工業的に大変有用なものであるが、一方で取り扱いを誤ると事故につながるような危険性を秘めている。

本稿では、ガスに起因する事故事例とその対策を紹介する。防災、あるいは事故対策の参考になれば幸いである。

 

二 高圧ガスの危険な性質

工業用ガスは通常、圧縮又は液化した状態で運搬、貯蔵されている。高圧ガス保安法では、ひとことで言えば、一MPa(アセチレンでは〇・二MPa)以上の圧縮ガス及び〇・二MPa以上の液化ガスを高圧ガスと定義している(詳細は高圧ガス保安法第二条を参照)。

高圧ガスは正しい知識を持って取り扱えば決して危険なものではないが、残念ながら製造、輸送時や消費現場等での事故が絶えない。これらの事故を防止するために、また万が一事故が起こったときその被害を最小限に食い止めるためには、まずガスの性質を知ることが重要である。

工業用ガスの分類方法としては色々あるが、燃焼性による分類と毒性による分類は、防災上特に重要である。

(1) 燃焼性による分類

ガスの燃焼性により可燃性ガス、支燃性ガス及び不燃性ガスに分類することができる。可燃性ガスとは、空気中で燃えるガスのことで、水素、アセチレン、LPG等があげられる。この中にはモノシラン、ホスフィン等のように着火源がなくても空気(酸素)に触れるだけで発火するもの(自燃性ガス)や、アセチレン、ゲルマン等のように単独で圧縮するだけで分解爆発するもの(自己分解性ガス)等もある。爆発範囲は、爆発限界ともいい、可燃性ガスの気体又は可燃性の液体の蒸気と空気との混合物に点火したとき、その火炎が全体に伝播し、爆発を引き起こすガスの濃度の限界のことである。

爆発範囲が広いほど危険なガスであり、取り扱いに注意が必要である。支燃性ガスとは、他の物質の燃焼を助けるガスをいい、空気、酸素、塩素、笑気ガス等があげられる。

不燃性ガスとは、そのガス自身燃焼せず、他の物質の燃焼を助ける性質を持たないガスをいい、窒素、炭酸ガス、アルゴン、ヘリウム等があげられる。

(2) 毒性による分類

毒性ガスとは暴露されたり、吸引すると人体に悪影響を与えるガスのことである。

 

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表1 各種工業用ガスの性質

1. 空気中、101kPa、20℃

2. モノシラン相当の許容濃度と考えられている。

3. Seとしての値

 

 

 

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