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四 活動概要

指令室が発した「中高層建物火災第一出動」の指令書に基づき、徳島市西消防署からポンプ車二台、タンク車、梯子車、救助工作車各一台、徳島市東消防署からタンク車、高規格救急車各一台、消防団からポンプ車二台の計九台が出動した。

最寄りの西消防署消防隊は、火災現場から約三〇〇m手前で、マンション六階の一区画から、黒煙と多量の火炎が噴出しているのを確認したので、現場の最高指揮者は、指令室へ炎上火災であることを報告し、火災規模から延焼拡大の恐れと長時間の消火活動を要すと判断し、一九時〇〇分に指令室へ第二出動を要請した。

指令室は、「中高層建物火災第二出動」の指令を発した。

この指令書に基づき、徳島市西・東消防署から、スノーケル車、救助工作車、消防団などからポンプ車など計六台の車両が応援出動した。

現場に近づくにつれ、黒煙及び火災は激しさを増した。

現場到着時、中高層建築物(七階建てマンション)六階の一区画内が完全に炎に包まれ南側開口部から盛んに火炎を噴出していた。

指令室から「中に老女が閉じ込められている。」との無線を受信。また、到着時の聞き込み情報から「逃げ遅れ一人」を入手したので、現場最高指揮者は、直ちに第一小隊に六階の出火室の玄関ドアが施錠されていることを想定して、エンジンカッター及び弁慶等の破壊器具を携行させ、人命検索を行うよう指示し、また第二小隊には、出火住戸東隣の南側ベランダから出火室への進入を指示した。

第二小隊が出火室への進入を試みるためベランダの仕切板を突き破った際、出火室開口部からは激しく火炎が噴出しており、その猛炎・熱気の中で避難路をたたれた老女が、仕切板付近でうずくまっているのを発見、これを救出した。

この救出した老女は、極度の興奮状態であったが、救出した隊員に「おじいさんが中にいる。」と悲痛な声で叫んだことから、現場最高指揮者は直ぐさま、この情報を玄関ドアを開放中の第一小隊に連絡するとともに、指令室へ報告、救急車の応援要請を行った。

その後、この老女は隊員二人の徒手搬送により、一階ロビーまで搬送し、先着救急車で病院へ収容した。

第一小隊の救助隊員及び消防隊員は現場最高指揮者からの「要救助者あり」の情報を基に、猛炎が吹き出す中、援護注水を受けながら屋内進入を行い、玄関付近でうつ伏せ状態で倒れていた老人を発見、直ぐさま安全な場所へ救出した。

この老人は猛炎の中で逃げ遅れ、顔面、背中等に熱傷を負っていたため、毛布及びシーツ等で身体をくるみ、救助隊員等が一階ロビーまで搬送し、応援要請により現場に到着した救急車で病院へ収容した。

一方、地上の他の小隊に対しては、避難している住民に対して、逃げ遅れの確認、怪我人の有無の確認を指示するとともに、後着した各署所の小隊に水損防止を主眼とした活動を行うよう指示した。

このような防御活動の中において、今回の火災では負傷者二人を救出し、覚知から約一時間半で鎮火することができた。

 

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おわりに

本火災においては、七階建ての共同住宅の六階からの出火であったため、当初水損を考慮し、筒先配備を最小限に抑えたものの、火勢及び人命検索の必要性から、消防隊が多量の放水を行った。

しかし、他の隊及び消防団等の有効な水損防止活動により、居住区画六一世帯のうち出火室は全損であったものの、その他の水損は三世帯であった。

また、付近の道路が狭隘であることを予想していたが、梯子車を出動させた。

しかし、有効に活用するに至らず、今後の出動体制に課題を残すものとなった。

 

 

 

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