この場合において、消防庁長官は、当該災害発生市町村の属する都道府県の知事に対し、速やかにその旨を通知するものとする。」とし、さらに第三項(消防庁長官の措置要請にもとづく都道府県知事の当該市町村長にたいする措置要求)、第四項(消防庁長官の災害発生市町村以外の他の市町村の長に対する応援出動等の要請とこれに関する当該知事への通知)、および第二四条の四(応援職員にたいする被応援市町村の長の指揮)で、防災・緊急対策遂行の責任体制を明らかにしている。
災害救助法は第一条(目的)「災害に際して、国が地方公共団体、日本赤十字社その他の団体及び国民の協力の下に、応急的に、必要な救助を行い、災害にかかった者の保護と社会の秩序の保全を図ること」、第二二条(都道府県知事の任務)「救助の万全を期するため、常に必要な計画の樹立、強力な救助組織の確立並びに労務、施設、設備、物資及び資金の整備に努めなければならない。」、第二三条(救助の種類)第五号「災害にかかった者の救出」、第三〇条(職権の一部委任)「都道府県知事は、救助を迅速に行うため必要があると認めるときは、救助の実施に関するその事務の一部を市町村長が行うこととすることができる。」、第三一条(応援指示)「主任大臣は、都道府県知事が行う救助につき、他の都道府県知事に対して、応援をなすべきことを指示することができる。」と定める。
救急業務の質的担保は消防法施行令第四四条第三項(救急隊員の資格要件)によれば、「1]救急業務講習(自治省令所定の課程)修了者」「2] 1]と同等以上の学識経験者として自治省令に定められた者」とし、1]の「講習課程」は消防法施行規則第五〇条により救急業務講習課程として、2]の「同等以上」は同上規則第五一条により「消防庁長官の認定した者」とあるが、定期的な研修による業務の質的改善努力の必要はもちろんである。
消防法第二条第九項の救急隊員の行う「応急処置」について「緊急やむを得ないものとして、応急の手当を行うこと」の内容・範囲につき議論があったが、昭和五三年消防庁告示第二号「救急隊員の行う応急処置等の基準」が制定され、平成三年八月に、その一部改正(消防庁告示第四号)が行われ、応急処置の範囲は拡大されている。しかし阪神大震災の反省によって、救急隊員・消防団員がなしうる救急活動の範囲の拡大が論じられている。
三 大規模災害時の緊急業務と行政運営
災害対策基本法の定める「災害」は、1 異常な自然現象(暴風・豪雨・豪雪・洪水・高潮・地震・津波・噴火など)(自然災害)による被害、2 大規模な火事もしくは爆発(事故災害)による被害、3 その他(放射性物質の大量放出・多数の者の遭難を伴う船舶の沈没など)大規模事故に起因する被害をいう。
災害対策の責任主体は1市町村 2都道府県 3国の順序である。災害対策一般法としての災害対策基本法と災害対策特別法との連関については、例えば、海洋油汚染事故については、「海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律」による海域ごとの「排出油防除計画」等他の法令にもとづく防災に関する計画との具体的な調整規定(災害対策基本法第三八条)がおかれている。つまり、事故については、自然災害と大きく異なるので、事故の態様に応じた対策を規律する個別法による対応を図ることを想定して、一般法たる基本法とともに適切な災害対策を講ずる体系となっている(ちなみに、上例の場合、「海上災害」は「油もしくは有害液体物質等の排出又は海上火災(海域における火災)により人の生命若しくは身体又は財産に生ずる被害をいう。」である。)。ナホトカ号事故の場合、自衛隊法第八三条「天災地変その他の災害に際して、人命又は財産の保護のため必要があると認める場合には」都道府県知事、海上保安庁長官、管区海上保安部長又は空港事務所長の要請に基づき部隊の派遣が実施される(災害派遣)が、事故災害にも同法が適用され、海上保安本部長の要請で自衛隊派遣がなされ、沿岸漂着の油回収については県知事からの派遣要請によって自衛隊の災害出動がなされた。