日本財団 図書館


坂出市消防本部(香川)

019-1.gif

 

当本部のある坂出市は、対岸の岡山県と海峡をはさみ、古くから瀬戸内(うち)の島々とを結ぶ交流拠点として発展してきた。近年は、昭和六三年の瀬戸大橋の完成により、四国側の玄関口となり、管内には四国横断道、造船所、石油コンビナート等の消防事象を抱えている。

市内と瀬戸内海を眺望できる「五色台」は、平安時代後期、皇族の政権争いに源平武士が加わり起こった「保元の乱」に破れ、この地に流された、崇徳上皇の終焉の地でもある。ここから瀬戸内海を眺めると、穏やかな波間に点在する島々がみな曲線的な美しさを見せ、のどかで安らぎを心に感じさせてくれるものがあったが、哀れ上皇は、この景色を眺めながらどんなことを想い、暮らしたのだろうか。

さて、当本部は、昭和二四年九月に発足、現在では一本部一署二分署一分遣所、七三名の職員と、一消防団一〇分団、五二〇名の団員が隣接する宇多津町を併せた管轄面積一〇〇・五二平方キロメートル、人口約七万五千人の防火・防災を担っている。

★瀬戸大橋で災害が発生したら

この橋における災害対策については、瀬戸内海を隔てた岡山県倉敷市消防局と相互応援協定を締結しているが、その大部分が当本部の管轄となっている。橋の消防設備としては、五〇メートル間隔に消火栓、非常用電話を配すなど、その対策は十分になされているが、例えば、交通事故による救急発生事案では、救急車の他、水槽付ポンプ車と救助工作車を同時出場させることとなっており、橋の一番遠いところでは通報から現場到着まで、およそ一五分の時間を要す。その間、本署が空となった場合は、他の分署等から配置転換し、対応する体制となっているが、今後も起こりうる事態を想定し、机上訓練を重ねるなど、その対策に万全を期している。

★空き店舗の防火対策

管内人口は緩やかに減少、それに伴い、地元商店街の空き店舗も二割程度が閉鎖され、子供のたまり場となるなど、その防火対策が課題となっている。当本部としては、厳重な戸締まりを喚起するなど関係者に対して行っているが、この現象は当本部に限らず、近隣本部も同様の問題を抱えており、共通認識として捉えることにより、警防、予防、救急、総務の四つの担当者会議を随時開き、情報交換するなどの対策を講じている。

★若手のホープ菊地消防士

消防学校初任科教育を昨年修了し、現在、消防署の第一線で活躍している菊地幸治さん(二三歳)は、地元の府中湖にて六歳からカヌーを始め、めきめき力をつけた。

その甲斐あって、高校、大学時代に国体を経験、社会人として初めて臨んだ今回は、七月の県大会、四国大会を連続優勝で飾り、見事今年の国体出場を果たした。

郷土の代表として、消防職員代表としての活躍が期待される。

★職員の総意で大胆な見直しを

三木消防長のモットーは「誠心誠意」で、この姿勢で仕事をこなせば、必ず市民に伝わる。どんなに困難なことでも道が拓けるものと語られた。そして、これを支える条件として、仕事・健康・家庭の三つのバランスが大切であると付け加えられた。この三つが互いに依存しあい、その一つでも崩れてはいけない。いわば、人生の三要素だと捉えておられる。とりわけ消防職員にとってはとても大切なことであろうとのことであった。

消防行政についても、これからは慣習・伝統や現状維持にとらわれず、大胆な見直しを図ることが二一世紀の消防行政にとって大事なのではと語られた。即ち「上意下達」でなく、職員の総意で何か見直していくことができればと力強く結ばれた。(河原公一)

 

019-2.gif

カナディアン―シングルでレース中の菊地さん(左側)

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION