日本財団 図書館


ルポ

 

北留萌消防組合消防本部(北海道)

018-1.gif

 

当本部は、北海道の中でも日本海に面した北部に位置し、海岸線に沿って帯状に長く、留萌支庁管内の中北部の苫前町、羽幌町、初山別村、遠別町、天塩町、幌延町の五町一村で構成された広域消防組合である。

管内には「暑寒別天売焼尻国定公園」、北部には日本最北端の国立公園「利尻礼文サロべツ国立公園」があり、この海岸線は、「日本海オロロンライン」の愛称で呼ばれ親しまれている。また、南部に位置する苫前町には日本海特有の風を利用した巨大な四二基の風車で総出力五三、三〇〇kwの風力発電所があり、風車のメッカを誇る光景が見られる。海と山の自然に囲まれた四季折々の美しい地域で、特に日本海に沈む夕日は見る人の心を和ませてくれる。

当本部の管轄面積は二、七二五・八一km2と広大な面積を有し、南北に一〇〇kmにわたる。人口は二七、〇〇〇人である。

消防組合は昭和四八年四月一日に設立され羽幌町に本部を置き、一本部一署六支署四分遣所、職員九三名と八消防団二二分団六二二名の消防団員で住民の安寧のため一丸となり、地域の防火防災を担っている。

★泥炭地帯での火災

「最近は特に大きな災害はないが昭和五五年八月に利尻礼文サロベツ国立公園内のサロベツ原野未開地の泥炭地で発生した火災には鎮火まで三日間を要しました。」と江幡消防課長は当時を思い出しながら語った。現場は泥炭地帯で低湿地帯のため現場には消防車両が近づくことができず、自衛隊のヘリコプターによる空中消火と職・団員によるジェットシューターでの消火活動と、重機車両を投入し火防線を切り、まだ火の入った泥炭を掘り起こしながらの消火活動を展開したが、五一〇haを焼失した。「三日間の消火活動人員は延べ六四一名、使用した消火薬剤は五、一〇〇kg、ジェットシューター一一一基、ブルドーザー二台、ヘリコプター三機が動員されました。」と江幡消防課長は語られた。

★職員の高齢化対策

「少数職員のため、職員全てがオールラウンドプレーヤーとして消防業務に従事していますが、近年の財政逼迫により職員の増員が図れません。また、年金制度の改正に伴い、職員の再任用による高齢化が一層進むことが懸念されるため、今後構成内町村等との協議を進め、定年退職後は関係町村での再任用をお願いし、職員の新規採用を図っていきたい。」と藤矢総務課長は職員の高齢化対策に向け語られた。

★過疎化と高齢化

管内町村では、過疎化に加え高齢化が進んでいるため、出火防止と災害弱者対策の予防行政に最重点を置いているとのことである。

消防サイドから各地域へ積極的に赴くようにし、特に一人暮しや病弱な高齢者とは密接にコミュニケーションを図り、冬季においては職員による災害弱者宅の除雪作業を行い雪害による災害防止にも努めている。

★救急業務の高度化推進

平成九年度に救急業務高度化推進協議会を設立し、平成一一年度から高規格救急車による運用を開始した。救命士の養成も計画的に進められており、現在八名が活躍している。今後も計画的に養成を図り各支署に配置し、救急業務を充実させていきたいと富居消防長は語られた。

★消防長の方針

「将来を展望した消防行政の実現に向けて、豊かな創造性と判断力に富み、消防人としての『謙虚さ』や『誠実さ』を兼ね備えた人こそ、これからの消防を担う貴重な人材であると確信しているところであり、職員の意識改革ひいては、人づくりを重要課題の一つとして全力を挙げて取り組んでいます。」と富居消防長は力強く結ばれた。

(高宮恭一)

 

018-2.gif

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION