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中国の消防問題

中国では一九九三年から一九九八年までの六年間に四九万件の火災が発生して一五、五九一人の死者、二八、三四九人の負傷者及び約九四〇億円の直接損害を出している。

同期間中にデパート、スーパーマーケット、ホテル、ダンスホール、レストラン等の公衆集会場で三七七件の大規模な火災が発生しており、これにより六九九人が死亡し、九九〇人が負傷して、約二四〇億円の直接損害を出している。

特に、一九九四年一一月二七日に遼寧省フーシンのイーユアン・ダンスホールで発生した火災で二三三人が死亡し、二〇人が負傷した。また、同年一二月八日新疆ウイグル自治区カラマイ市の講堂の火災で三二三人が死亡し、一二〇人が負傷した。

一九九六年に発生した広東州深せんのダンシー・ホテル火災では三〇人が死亡し、一三人が負傷した。また、一九九七年に発生した湖南省長沙のヤンシャ・ホテル火災では四〇人が死亡し、八九人が負傷した。

また、石油化学工場等の危険物施設でも八一件の大規模火災が発生して一二一人が死亡し、一四六人が負傷して、約三〇億円の直接損害を出している。

中国の消防は国の軍隊消防という制度を取っており、公安部(日本の省)消防局は、都市とそのインフラ(産業基盤)の耐火度を強化することを主なテーマとして掲げている。

国の消防基準によると、二三一の指定都市にはその規模と状況に従って二、四九〇の消防署と三一〇、〇〇〇基の消火栓を設置しなければならないが、一九九七年末現在において一、〇九一署しかなく、基準の四三%にしか達していない。消火栓の数は一五〇、〇〇〇基で、これも基準の四八%である。

消防局は、このような状況を改善するために、消防署を強化し、消防隊の進入路を確保し、消防通信、消防水利等を整備するよう各自治体に指示している。特に、公安部は消防署の建築計画と設計に関する第一回の指針を出している。

現在中国では建築段階でも消防設備が基準に達していないビルが多い。その上消防設備の保守管理に関する基準も守られていないので、防火戸、屋内消火栓、火災感知設備、スプリンクラー等の消防設備は適切に作動していない。中国当局の調査によると、確実に作動するビルの消防設備はわずか六〇%しかないという。

次のステップは、性能規定に従った消防基準を策定して、ビルの防火水準及び人々の防火意識と火災安全の技術とを高めることである。また、この基準によりビルの建築において革新的でフレキシブルな設計が可能となり、費用効果を高めることができるという。

中国は、これからのミレニアムに消防力を強化して、国民に対してより良い消防・救助サービスを提供することを目標としている。

(文責 大野春雄)

 

 

 

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