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しかるに、第二小隊の隊員は、金属屑の存在を本件消防本部に連絡せず、本件消防本部の職員にもたらされたHからの情報も軽視ないし無視され、A消防本部は、小規模の爆発現象が生じるまで漫然と注水を開始・継続したものであり、この点において過失があるものといわざるを得ない。

(五) なお、A消防本部は、本件爆発について予見可能性がなく、また、注水しなければ、本件爆発は回避できたとしても、原告ら周辺家屋への類焼等の結果発生は回避し得ないと主張するが、前記認定のとおり、アルミ火災の消火方法が消防署職員の必修事項であることからすれば、注水による本件爆発は予見できたといえるし、前記認定の気象条件、出火点と原告ら家屋との位置関係(いずれもY会社S営業所とは道路を隔てた区画にあり、アルミ倉庫に最も近い原告Tらの借家であっても、出火点から約七m離れている。)、A消防本部の消防隊の現場到着が本件失火の約一三分後と早期に出動していること、少なくとも第一回爆発までは原告Tらの借家には延焼していなかったと認められることからして、自然鎮火を待つのは危険だとしても、出火点に対しては、速やかに前記(三)イの消火方法を講じ、その後周囲に対して適宜に消火活動を行っていれば、原告ら家屋への類焼は十分に防げたものと推認することができるのであり、A消防本部の右主張は採用できない。

という判断を示し、A消防本部の責任を認めた。

二 争点三(Y会社の責任について)

争点三については、裁判所はY会社の日頃の防火体制、可燃物の管理体制、従業員に対する監督体制及び本件失火に至るまでの一連の行為には失火責任法所定の重過失があると判断した。そして、この失火は、消火活動を誤れば、大規模な被害を起こしかねない種類のものであるので、そして、A消防本部の消火活動が介在しても原告ら損害に対する責任は免れることができず、A消防本部の過失による行為とY会社の重過失による失火は、共同不法行為の関係にあり、両者は連帯して損害賠償金を支払えとの判断を裁判所は示した。

三 争点四の損害額については、建物残存価格や家財道具価格等の損害を認めた。

 

第七 本件についての考察

一 本件については、控訴中であるため、控訴審での判断が待たれるところである。

二 爆発火災に失火責任法が適用されないとする判例は、何例かあるが、本件のような消火活動による爆発火災に失火責任法が適用されるか、高裁の判断が望まれるところである。

三 消火活動中、アルミ火災だと従業員がいったところでただちに消火活動を停止しなければいけないかが、消火活動の実務上問題点があると思うので、この点の、高裁段階での判断が待たれる。

四 本件はアルミ爆発火災についての貴重な事例であり、実務上重視しなければならない事例であるといえよう。

 

 

 

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