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黒石地区消防事務組合消防本部(青森)

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今回は、青森県の黒石地区消防事務組合消防本部を取材した。当本部は、黒石市と田舎館村で構成されている。弘前から弘南鉄道に乗り、終点黒石駅で下車する。黒石市は、十和田湖への西の玄関口として知られており、十和田湖に至る国道沿いには、温湯、落合、板留、温川、青荷からなる黒石温泉郷がある。市内には、藩政時代の面影を残す「こみせ(小見世)」が数百メートルに渡り残っている。こみせは雨や雪を防ぐアーケード状の通路、昭和六一年に「手作り郷土賞」、六二年に「日本の道百選」に選ばれている。また、黒石市には特色ある祭礼が多く、運行台数県内一を誇る「黒石ねぷたまつり」や日本三大踊りのひとつ「黒石よされ」、藁で作った船の帆柱に火を放ち流す「大川原火流し」など全国的によく知られている。管内は、米とりんごの産地としても知られており、吟醸酒や純米酒も通の人に好まれている。黒石市と組合を構成する田舎館村は、昭和五六年に弥生時代中期の畔で区画された碁盤目状の水田跡が発見され、それまでの通説を覆した地。村役場は戦国時代の城郭をイメージして造られ、観光名所にもなっている。

同本部は、昭和二七年に黒石町消防本部として、消防長以下七名で発足し、昭和四六年に黒石市と田舎館村で黒石地区消防事務組合消防本部となった。現在は、消防長以下九五名の消防職員と一、一三八名の消防団員で防火防災業務を行っている。

★当本部特有の活動

当本部の管内は静かで安全な城下町。ただし、特有の活動がある。害虫駆除と遭難者捜索がそれである。管内の七割近くが山岳で、それらの業務割合が高い。本部では本来業務と言えるかどうかは別として、住民サービスの一環として行っている。

害虫駆除では蜂の巣の駆除が多く、一一年中に六一件あった。装備には、頭全体を覆うガードの付いたヘルメット、殺虫剤、梯子、蜂の巣を入れる袋。駆除の秘訣は、動きの鈍る気温の低い時が狙い目とのこと。また、春の山菜、秋のキノコのシーズンには、遭難者の捜索があり、長い場合には四日もかかる。捜索には、ナタ、無線、水筒、地図などを準備する。地図のメッシュにしたがい、しらみ潰しに捜索していく。最近ではヘリを活用し、効果を上げている。当本部では、遭難者捜索、山火事防止のため、番号の入った立て看板を山に立て、番号を目印に遭難者捜索等に役立てている。

★消防図画・防火作文の募集

当本部では、様々な火災予防行事を行っている。その中でも消防図画・防火作文の募集は好評だ。消防図画は春の火災予防運動時に、防火作文は秋の火災予防運動時に行っている。図画・作文共に個人賞を選び、金・銀・銅のメダルを授与している。これが子供には好評だ。募集作品で展覧会を開いたり、地元新聞紙上に掲載したりと広報効果も大きい。今後は、記念文集等の発行も検討している。

★自己研鑽に努め、住民の側に立った消防を

佐藤消防長にモットー等についてお聞きした。「組合消防として日も浅く、議会、財政、人事等に関する情報が不足している。総務的情報を解説した書物等も少なく、近隣の組合本部と情報交換等を行って対応している。消防を取りまく環境も厳しい。職員は各種研修等に参加し、あらゆる業務に対応できるようになってほしい。住民の側に立った消防を目指している。人は心、謙虚さと行動力、静と動、静かな中にも闘志が必要だ。謙虚さをもって事にあたれば、自然と住民に信頼される。平素からの信頼関係が大切だ。消防団、関係団体とも協力しながら消防行政を進めていきたい。」 (大橋実)

 

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