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赤平市消防本部(北海道)

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当本部は、北海道のほぼ中央部に位置しており、市域は東西一四・一km、南北一八・五kmであり、人口約一万六千人、面積一二九・八八km2を管轄している。市の南及び北の大部分は山岳地帯になっており、中央部は東西に空知川が流れ、国道三八号線とJR北海道根室本線がこれに並行して走り、これらを軸として帯状に長く市街地及び密集地を形成している。気候は北海道にありながら比較的温暖であり、平均気温は、夏期(四〜一〇月)は一六度、冬期(一一〜三月)がマイナス〇・五度であり、恵まれた自然環境によって古くから農業を基盤に発展してきた。一方、まちの基幹産業として古くは石炭産業が発展し、昭和三五年には大小二〇余りの炭鉱を有し、人口は一時約五万九千人にも達したが、以降のエネルギー消費構造の変革により、平成六年二月を最後に閉山を余儀なくされた。しかし、市民一丸となって「鉱業のまちから工業のまち」へと転換を図るべく、広大な炭鉱跡地を利用して工業団地を造成するなど産業立地基盤の整備を進め、企業誘致に力を注ぐとともに企業起こしを図り、現在では空知支庁管内でも有数の製造品出荷額を誇る工業都市へと変容し、その発展は目覚ましい。

消防本部は、昭和三六年五月に設置され、現在一本部・一署・一出張所・二分遣所、消防職員五一人と消防団員一一〇人が一致協力し、郷土の安全を日夜見守っている。

★山菜採りに係る事故に警戒!

管内のイルムケップ山(八六五m)は道内有数の山菜の宝庫として有名であり、雪解けに伴いワラビ、竹の子等の山菜採りを楽しむ観光客等が多数入山するが、一方、この時期になると毎年のように入山者の行方不明が続発する。北海道の竹の子は根まがり竹といって、直径二〜三cmの太さの竹藪をかき分けてその根にある竹の子を採るもので、非常に体力を消耗する山菜採りである。先に実施した林道入り口での入山者の調査では、早朝一時間で一一三人が入山し、その内容は、単独行動者が全体の約四〇%、また、六〇歳以上が約三〇%で、八三人が携帯電話を持っていた。非常時の通報手段として携行している人が、その大部分を占めていたものの、この地帯は山岳の沢にあるため通話不能のエリアとなり、依然、入山者の事故への危機感は薄い傾向にある。今年は、管内の雪解けが遅く、山菜採りのシーズンが長く続く見込みであることから、当本部においては、管内の山間地図、携帯無線機、携帯照明等の増強で出動体制の強化を図り、市民等には広報誌等で心構えを提起するなど事故防止に努めている。

★高齢者災害弱者の予防対策!

当市では、核家族化が進行している中で、全人口の二八%が高齢者によって占められている状況であり、一人暮らしの高齢者や高齢者世帯の災害弱者に対する防火安全対策の徹底は最も重要な課題である。以上のことから、当本部では、高齢者を対象にした重点査察や女性消防団員による防火訪問を積極的に行っている。その結果、当市では一七年間にわたり高齢者の焼死事案が発生していない。今後もこの継続を図るべく、今年度においてはホームヘルパー、町内会及び消防職・団員が有機的に連携をとり、査察や防火訪問を効率的に実施する等、高齢者等災害弱者の予防対策に万全を期するよう取り組んでいく。

★「継続」と「和」!

内田消防長は、「継続は力なり」と「和」をバックボーンにして消防行政を推進している。消防は「プロの集団」としていかなる場面に遭遇しても力を発揮することができるよう、普段から継続して訓練を重ねるとともに、職場内の環境作りにおいては職員間の「和」を大切にしていくことが必要である。と述べられた。 (高田利広)

 

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