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これらの状況からストレッチャーの肩搬送は止め、前後二カ所に取り付けたロープを四カ所に増やし、道が広くなった時に搬送人員を加える事とし、先導する案内人が雑草を刈ることによって姿を現わす道を搬送した。

下山を開始して一時間程経過した頃、疲労を感じていた隊員に追い討ちを懸けるように豪雨が降りだし、体力、気力が奪われていく中、各々要救助者を励ましながら、互いに声を掛け合い、危険が増した急峻な道を気を抜くことなく、ずぶ濡れになった身体を引きずるように搬送を続けた。

降り続く雨の中、さらに四〇分程経過した頃体力、気力も限界を超え、ただ使命感のみで黙々と搬送している隊員の耳に飛び込んできた、案内人の「着いたぞ」の言は萎えかけていた気力を呼び覚ますには十分であった。下流から人声が聞こえた時の嬉しさ、人影が見えた時の安堵感、そんな気持を全身で感じながら一七時四九分救出完了し、要救助者は待機中の救急隊によって病院へ搬送された。

 

おわりに

今回の教訓として、いかに近代的なハイテク機材を常備していても、時には隊員の精神力が最新の機材をも上回る力を発揮することを痛感し、日頃から体力の維持、鍛練を怠らず救助技術の錬磨に励む必要性を再認識した。

また、頑張り抜いた要救助者とその仲間、役場、地元民の惜しみない御協力に感謝しつつ、救助活動の困難性、危険性を見事に克服し、消防の使命を全うした隊員を我が誇りとして、今後も複雑多様化する災害に迅速、的確に対応していきたい。 (柳田太)

 

予防・広報

住民総参加の消防こそ実効ある火災予防

宮古地区広域行政組合消防本部

 

はじめに

当消防本部は、本州最東端の街宮古市を核に田老町、山田町、岩泉町、田野畑村、新里村、川井村の一市三町三村で構成し、昭和四九年に発足した組合消防です。岩手県の東部、北上山系のほぼ中央に位置し、東は太平洋、西は盛岡、北は久慈、南は釜石の各広域圏に隣接しています。

また、陸中海岸のほぼ中央に位置し、浄土ヶ浜では観光船からウミネコに餌付けをして楽しみ、鍾乳洞で有名な龍泉洞を探検し、二百メートルもの断崖が続く海のアルプス北山崎の景観を楽しむなど、年間を通じて観光客が訪れています。更に、季節毎にいろいろなイベントが地域との交わりを盛り立てる一方、百名山の一つ早池峰山への登山が静かなブームとなっており、豊かな自然を満喫するにふさわしい環境にあります。人口一一万五千人が面積二、六七二km2に居住していますが、圏内の一、七五〇km2(六五%)は山林で占められ、ほかは田、畑、宅地などとなっています。

消防体制は一本部、三署、四分署から成り、職員百八三名で、この広大な面積を守るためには消防団との連携は欠かせない地域です。

 

一 幼少年消防の「火の用心」活動

当行政組合には、幼年消防が一九クラブ、八三七名、少年消防が一〇クラブ、二七六名おり幼稚園や保育所を単位として活動しています。幼年消防隊員を集めて防火映画や消防ポンプ自動車との綱引き、救急車の展示などをとおして消防職員との交流が消防記念日の恒例行事となっています。中でも行事の最後に行われる目抜き通りでの園児の行進はカッチ、カッチ「火の用心」と法被姿で力一杯拍子木を打ち防火を呼びかけ、その姿は道行く人々に一様に感銘を与え、防火に対する意識を強く植え付けるにふさわしい行事となっています。

また、幼年消防、少年消防は、各市町村の消防演習に特別参加することが多くあります。纏のミニチュアを持ち豆絞りの手ぬぐいを頭に巻いての遊戯や消防演習の合間に行う鼓笛の演奏で演習に加わりながら、火災予防の啓蒙に一役買っています。

 

 

 

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