日本財団 図書館


隠岐島村組合消防本部(島根)

019-1.gif

 

隠岐島は、島根半島の突端から四五〜八〇kmの日本海上の群島で、島前(どうぜん)(西ノ島:西ノ島町、中ノ島:海士町、知夫里島:知夫村の二町一村)と島後(どうご)(西郷町、布施村、五箇村、都万村の一町三村)に大別される。

当本部は昭和四八年一〇月、職員三〇名で船出し、現在は、一本部一署一分署二出張所、六五名の職員と全島七消防団、一、〇七六名の団員で、二万六千島民の生活と安寧を守るため消防防災の任務を担っている。

★管内の特性

隠岐島は、大山隠岐国立公園として日本海のオアシスと称され自然の景観がいっぱいである。古くは後鳥羽上皇や後醍醐天皇を代表に流人の島として都の文化が伝わった。沙魚川本部次長は「隠岐島には、北前船の船頭らにより北海道から九州方面に至る各地の唄が一三〇曲余りが伝わり、隠岐民謡として今に伝承され、その代表が『隠岐しげさ節』です。名所旧跡は基より歴史・文化がいっぱい。『牛突き』もその一つです。」と笑みを浮かべて語られた。隠岐空港には新たに二千m滑走路を建設中のほか、港湾をはじめ道路拡幅、トンネル工事等が進められており、活気が感じられた。

島前の三島間及び島後間の交通は海上輸送であり、火災も救急も島外からの支援は無く(救急の本土搬送を除く。)、各島ごとの署所が、消防団や自主防災組織等と連携して災害に対処している。一一九番や緊急通報装置は、本部通信指令室が集中管理し、消防車両等や各役場とは無線及び携帯電話等で連絡され、各町村内では防災行政無線及びオフトーク通信により拡声される仕組みである。

★命の努力《ドクターヘリと共同処理》

島後には隠岐空港があり、島前三町村には夜間でも離発着が可能なヘリポートが完備されており、救急患者が発生した場合は、原則として医師等が同乗する防災ヘリによる本土搬送を行っている。(年間約三〇件)また、本土側の医療機関までの搬送については予め鳥取県西部広域行政管理組合消防局、出雲市外四町広域消防組合消防本部及び松江地区広域行政組合消防本部と救急患者の搬送について「共同処理」の覚書をかわしており、これに基づく、防災ヘリや隠岐汽船等での本土搬送事例は年間約一〇〇件ある。(全体の約一五%)防災ヘリによるドクター同乗の運用については先進地と言え共同処理を含め、命に対する努力は全国的にも誇れる体制と言えよう。

★胃が痛む人事異動

「毎年四月に人事異動を実施しており三月一日に内示する。これには階級をも考慮しつつ島々の経験を積むことが組織の活性化に必要不可欠と考えているが、異動となると住居の移転はもとより、子供やお年寄りのいる家庭では家族と離れての勤務を余儀なくされることもある。各家族のことを思うと人事の厳しさを感じます。」と語る山根消防長。

しかし、島々でその地域の住民の一人として職務に打ち込む職員の姿を想像するとき、そこには職員共々苦労を越えてやり遂げる仕事に充実感を覚えるに違いないと感じました。

★消防長の方針

「隠岐島は活火山もなく災害の少ない住み良い所です。離島という地理的な面や財政力、人員には限りがあり、消防救急業務を推進する上で困難は伴いますが、国、県等との緊密な連携を図るとともに、消防団をはじめ各種団体や地域住民と一体となって、忍耐強く自分たちの地域は自分たちで守ろうという気概で島民のため、消防防災の遂行に取り組んでいる。助け合う意識も強く都会にはないものがあると感じている。

職員が情報を広く収集できるように、研修の場を島外に向け広げていきたい。」と山根消防長は結ばれた。 (武藤國造)

 

019-2.gif

島民に親しまれている“牛突き”

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION