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犬山市消防本部(愛知)

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当本部は、愛知県の最北部、木曽川をはさみ、岐阜県境に位置する単独消防本部である。

犬山市は、深く切れ込んだ山あいを縫って流れる木曽川が濃尾平野に開放される風光明媚な地にあり、戦国時代には戦略上の要衝であった。現在は、積極的な観光PRにより、多くの外国人も訪れるようになり「国際観光文化都市」としての飛躍が期待されている。

当市のシンボル的存在なのが、何といっても国宝犬山城。築城は四六〇余年前である。幾たびもの戦乱に遭いながらも現在に至り、美しい天守閣をとどめているのは、この城を治めた徳川家家臣成瀬家及び犬山町有志らが明治時代、濃尾地震により破損した天守閣の修理に大金が必要となり、一旦は県議会で取壊し案が提出されたものの、これを惜しむあまり、復旧と永久保存を条件に無償払い下げを受けたことによるものである。ちなみに、現城主は一二代目成瀬正俊氏であり、全国で唯一の個人所有の城として知られている。

他にも、日本最古の伝統を誇る犬山鵜飼、重要文化財を含む明治時代の建築物を集めた明治村などの観光施設に溢れている。

さて、当本部は、昭和三九年六月に発足、現在では一本部一署一出張所、七六名の職員と、一消防団六分団、一六八名の団員が管轄面積七四・九七km2、人口約七万三千人の防火・防災を担っている。

★文化財の消防用設備と訓練

数多くの文化財等を抱える当本部では、消防法に基づく消防用設備以外にも防火水槽、屋内・屋外消火栓設備、放水銃、ドレンチャー設備等の設置を積極的な指導のもとに推進してきた。この城をはじめ、各文化財等では、敷地内の喫煙管理や火気使用設備の自主点検の励行はもとより、当本部による自衛消防隊への訓練指導を定期的に実施しており、関係者との連携強化を図るべく、災害時における万全な即応体制を整えている。

★山林火災防止対策の推進

無論、当本部の防火・防災対策は文化財ばかりではない。山林火災対策にも力を入れている。山間部は市の七割にあたり、およそ一〇年に一度は大規模火災が発生しているという。ごく最近では、平成六年八月にハイカーのたばこの投げ捨てが原因と思われる山火事が発生、猛暑で水不足という最悪の気象条件が続くさなか、火は台風の影響を受けた風にあおられ瞬く間に延焼したが、広域応援体制のもと、周辺の溜池から火災現場まで二千mの林道を、署・団の車両七台による中継送水を実施、連係活動が功を奏し、七・五haを消失、約八時間後鎮火したという火災であった。

これらの状況からも毎年、森林の保全と地域の安全のため、ハイカー等の入山者や森林所有者等に対し、山火事防止の啓発活動を行つている。

★信頼される消防として

長谷川消防長は職員に対し、平常の消防業務には、何事にも「即時実行」を基本に取り組むよう指導される一方、災害時には、市民から最も信頼される消防として、常に仕事の目標を明確に、各人が協調性を持って取り組むよう日頃から提唱しているとのことであった。反面、消防業務は緊張の連続であり、ストレス解消の工夫も重要と捉え、仕事とプライベートの調和を常に考えて対応して行きたいとのお考えを述べられた。

最後に、阪神・淡路大震災後、市長部局所管の防災業務が消防業務として位置づけられ、適正な取り組みに日々努めていますが、今後一層これら業務の推進に意を尽くし、市の危機管理を預かる第一線の職場として、その職責を果たしたいとの力強い抱負で結ばれた。

(河原公一)

 

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