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まず、運転席のドアを開放し男性を救出。引き続き、救助隊員二名を車内進入させ傷病者の動揺防止と二次損傷に注意しながら、覆い被さったドアをスプレッターにより隙間を徐々に広げ、女性を運転席側に引き出し、抱きかかえ車外に救出完了。救急隊に引き渡し、病院へ搬送する。

七時〇九分 病院収容

八時一五分 男性 死亡確認

女性 意識不明・重体

 

おわりに

今回の事故は、雪道における路面凍結によるスリップ事故であり、今後、交通量の増加に伴い多重衝突事故等の大事故も予想されます。

このような悲惨な事故が起こらない事を祈ると共に、救急救助体制の充実・強化を図り消防署員の日々研磨に努め、住民の期待に応えていきたいと思います。

(藤田富男)

 

予防・広報

住民の安全を守る予防消防の取組み

伊香郡消防本部(滋賀)

 

はじめに

当消防本部の管轄区域である伊香郡は、高月町、木之本町、余呉町、西浅井町の四ケ町で構成され、「母なる湖」琵琶湖の北端に位置し、東は岐阜県、北は福井県に接しており、その八〇%が山間部であり冬期の気候は非常に厳しく近畿では有数の豪雪地帯でもあります。

この厳しい気候からか古くには養蚕業、生糸生産が盛んで山麓は桑の葉でおおわれていました。近年ではその風景はほとんど見られなくなっていますが、一部で引き継がれ製造されている琴糸は今でも一級品の折り紙がつけられています。

現在では南部地域のブラウン管製造、農漁業用エンジン機器製造、電子製品その他の製造業が主な産業となっており、この地域の経済の牽引役になっています。

また、北部山間部では、福井県から京阪神へ送電されている余剰電力を有効利用した、日本では最大級の揚水発電所が地下に設置されようとしています。これは自然破壊を極力少なくしたエネルギー対策であり、山間地域の振興施策であると注目されているところです。

当消防組合の管轄区域は三五一km2、管内人口は三万人であり、組合は消防本部と休日急患診療所で組織されています。

当消防本部は、昭和四八年に職員二九名で発足し、現在一本部一署、四四名で各種災害に対応しています。

 

一 訪問防火診断について

管内では、高齢者の福祉対策として、一人暮らし世帯にペンダント方式の緊急通報システムが設置され、通報を消防本部が受信しその対応を行っています。このことから住宅防火広報の主施策として、毎年初冬に緊急通報システムが設置されている世帯を訪問し住宅防火診断を実施しています。

最初は消防署の検査と思われ硬い表情での対応となりがちですが、コミュニケーションを図ることを心がけ、根気よく訪問を重ね、世間話や日常生活で困っていることを聞いたり、その場で解決できることを手伝っていくうちに緊張感が解け、今まで寡黙であった人が、冬期の生活の大変なことや昔の防火の話などを積極的にされ、予定の時間を越えることがしばしばあります。少しずつではありますが訪問防火診断の成果が現れ、信頼関係が築かれているのを実感します。

冬の時期山間部は雪深く各世帯が孤立したような状態となり、特に高齢者の一人暮らしには厳しい自然環境となり、その不安感は相当なものになります。過疎化と高齢化が増々進むことを考えると、福祉的な要素も大きいこの訪問防火診断を今後も積極的に推進する必要があると考えているところです。

 

 

 

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