気象は一般的に冷涼型で、短い夏と長い冬が特色で、冬季には一m程度の積雪があり北部ほど積雪量が多く、積雪期間が一〇〇日程度に及ぶなど県内でも降雪量の多い地域である。
リンゴと稲作の町であり、特にリンゴの生産量は町の部で日本一を誇っている。
当本部の体制は一本部一署、職員四三名で消防の任に当たっている。
今回紹介する事例は、路面凍結による普通乗用車二台とタンクローリー車との二重衝突事故の救助活動である。
一 事故発生の状況
事故当日天候は雪、気温マイナス三・二℃、路面は凍結していた。
事故は、当町と青森市を結ぶ国道七号線上において発生。減速した乗用車が後続の乗用車に追突され反対車線にはみ出し、対向してきたタンクローリー車と衝突、その反動で、除雪により高さ約二mほどになった道路側帯の雪の壁に、車両前半分程が突き刺さり停止し、車両内の二名が脱出不能となった。
二 事故の概況
(1) 発生日時
平成一二年二月二一日(月) 六時四〇分頃
(2) 発生場所
浪岡町高屋敷地内 国道七号線
(3) 覚知時刻 六時四二分
(4) 覚知内容
携帯電話による一一九番受信代表消防本部(弘前消防本部)からの転送
(5) 現場到着 六時四九分
(6) 救出完了 七時〇五分
(7) 要救助者 男性一人 女性一人
(8) 出場車両・人員
救急隊(第一救急車)三人
救助隊(二号車)四人
三 現場到着時の状況
六時四九分救急隊現着、ただちに事故現場及び傷病者の状況を確認する。
この乗用車は助手席ドアの破損が著しく、運転席側は雪の為、ドアの開放等は不可能であった。唯一開放できた左後部ドアより車内に隊員一名を進入させ、意識・バイタル・受傷部(骨折、出血等)の観察を行った。
運転席の男性は呼び掛け反応ありJCS2・呼吸早く喘鳴あり・大出血等なし。助手席の女性は呼び掛け反応なしJCS300・大出血等なし・腰部及び大腿部がドアに挟まれているのを確認。観察に基づき酸素投与、頸髄損傷を疑い、ネックロックによる頸部固定等を行ない救助隊長に現状を報告する。
四 活動状況
六時五〇分救助隊現着、救急隊長より傷病者のバイタル等の報告を受け、さらに事故現場の状況確認を行った。
助手席側は、雪による影響は少ないもののドアの破損状況がひどく、傷病者に覆い被さる様に潰れており、女性の腰部及び大腿部が挟まれていて、後部座席からの救出は困難であった。
運転席側は前後ドアともに道路側帯の雪に覆われており、救出活動不能であったため、現場近くのタイヤショベルを所有している事業所に除雪作業と事故車両の牽引を依頼し、協力を得た。
救助隊員による人力とタイヤショベルにより、運転席側の除雪を完了、さらに事故車両を道路中央付近まで牽引し、救出スペースを確保した。