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最近は、ポスターやパンフレットのみならず、新聞折り込みのちらしの中にもビジュアル的にすぐれたものが多く見られるようになった。束になった大量のちらしの中から、一瞬にしてその内容が自己に必要か否かが判別できるようなインパクトのあるものが増えてきている。広報紙など行政の印刷物を新聞折り込みして配布する場合は、特にビジュアルを意識して、ちらしの束に埋もれてしまわないような工夫が必要だろう。

とは言え、コストに制限があり、紙質や印刷、デザイン面や執筆にどれだけの労力と予算を注ぐことができるかという問題は、編集作業をする上で常に付いて回ることである。しかし、限られた条件の中で、いかに読む気を起こさせるかが編集者の勝負所だとも言えるだろう。また、より印象的な広報物をつくるためには、良い手本を参考に、取り入れられる部分は積極的に取り入れるという姿勢、つまり学習も大切である。

予算が一定なら、安価な印刷物を種類多く作るより、少々値は張っても、人々に好感をもたれ、積極的に読まれるようなものを作るほうがよい結果に繋がると思われる。

 

●メリットがある広報物とは

それを読むことによって精神的もしくは物質的に何らかの豊かさが得られた場合、人はメリットを感じ、深い充足感を覚える。メリットのある情報とは、次の行動を起こすのに役立つ内容のものと考えられるが、たとえ既に終わったことであっても、次の行動や考え方に影響を与えるような内容であれば十分に満足させ得るはずである。また、新しい情報が必ずしも万人に受け入れられるかと言うとそうではない。たとえ古い情報であっても、読み手にとって未知であり、新鮮に感じられる内容であればそれは価値ある情報であり、反対にいくら新しくても既に知っている内容であればそこに価値は見い出されない。

個人にとってメリットがあるか否かも「広聴」によって見えてくる。つまり、ターゲットの嗜好を調査・分析することにより、どのような情報が望まれ、受け入れられるかが自ずと見えてくるのだ。雑誌などでは、そのために懸賞付きの読者アンケートを頻繁に行ったり、モニター制度を設けるなど広聴活動を積極的に行っている。

行政機関も広聴活動の一環として、さまざまなアンケートやモニター制度を活用しているが、住民の生の声が聞ける窓口や電話など、すべてが「広聴」だと意識をし、全職員が草の根的な声を「広報」や「広聴」のセクションにまで伝えるという意識が必要だ。行政マン一人ひとりが、「広報マン」であり「広聴マン」であるという認識をもつことが、魅力のある広報活動、広聴活動に繋がると考えられるからだ。

 

●IT時代の「広報」「広聴」

インターネットの特性は、グローバル性とリアルタイム性、そしてツーウェイの三点だ。まさにこの三点こそが「広報」「広聴」にとって必要な要素なのだ。リアルタイムに多数のユーザーに向けて情報が発信できるからだ。しかし、何より魅力的なことは、掲示板やメール機能を活用すれば、ユーザーの声がリアルタイムにダイレクトに返ってくるというツーウェイ性である。そういった意味で、特に「広聴」としての機能が多いに期待できるのがインターネットだと考えられる。

しかし、IT革命が進んでも、広報紙やパンフレット等の紙媒体は当分なくなることはないだろう。通勤の車内で読める、電源を入れなくてもすぐに読める…という手軽さは、何といっても紙媒体の強みである。だからこそ、魅力的で親しみのもてる広報媒体を私達は望むのである。

 

補足

●広報活動におけるよい文章とは

文芸作品はともかく、情報発信のための文章の基本は、多くの人に理解してもらえることだ。凝った表現よりも、事実を的確に伝えられる表現が望ましい。大切なのは「言いたいこと」を読み手にしっかりと伝えることなのだから。

いくら内容が立派でも、わかりにくいと理解されない。そして理解できないことには誰も興味を示さない。大衆を読者としている新聞は、義務教育である中学校卒業程度の読解能力で読めるように文体、表現、漢字の使い方などを定めている。

また、漢字が多過ぎて黒々とした文面や、改行や句読点のあまりない息のつまりそうな文章は見ただけで読む気を損なわれる。適度に余白があり、バランスよく書かれたものが好感をもたれる文章である。

 

 

 

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