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倉庫内では内容物の発泡スチロール等が延焼拡大中であったため、指令課へ第二出動を要請する。

指揮隊は、出動途上、先着小隊からの「第二出動要請」を傍受、内容物等から活動が長時間にわたると判断し、空気ボンベの現場搬送を救急隊へ指示、併せて空気充填車の出動を要請する。

各小隊は「要救助者なし。」との情報により、空気呼吸器を着装、投光器を携行し、三連はしごを架梯、屋内進入し、濃煙熱気の中、うっすらと見える火炎に向けて棒状・噴霧注水を繰り返しながら火点を包囲し、徐々に包囲網を狭めながら火勢制圧をおこない消火した。

 

おわりに

本火災は、「周囲への延焼拡大危険が無かったこと」「出火建物近くに公設消防水利は無かったが、敷地内から容易に海水を取水できたこと」等いくつかの好条件に恵まれた。

管内で発生した火災としてはまれに見る大型倉庫火災であったが、先着隊からの情報、指揮隊の判断、各隊の協力、連携により比較的短時間で消火できたのではないかと思われる。

また、第二出動要請で出動してきた情報収集員が調達した飲料水で、高温熱気の苛酷な活動環境であったにもかかわらず、隊員の脱水症状等を未然に防ぐことができた。(飲料水の確保については、当局の内部運用で定められている。)

なお、当局としては、同種事故を防止するために、可燃性物品の保管管理及び取り扱いを含む防火管理体制の強化をさらに徹底するよう指導していかなければならないと考えており、手始めに火災後、当建物への立入検査を実施したところ、関係者の意向により、火災発生危険が大きい室にスプリンクラー設備が設置される等、本火災を教訓として消防設備の強化が図られた。 (石橋義教)

 

救急・救助

機械式駐車場における車両押し潰し事故

函館市消防本部(北海道)

 

はじめに

当市の、歴史をひもときますと、函館は安政六(一八五九)年、横浜、長崎とともに国際貿易港として海外に門戸を開き、いち早く外国文化に触れる機会を得てきました。このため、現在でも街のいたるところにエキゾチックな雰囲気が漂い、一〇〇万ドルの夜景で有名な函館山の麓の西部地区エリアは観光スポットとして、また「伝統的建造物群保存地区」として整備が図られ、保護されております。

当市は、このような歴史と文化の街でありますが、数多くの苦い経験を併せもっております。明治以来、一〇〇戸以上が焼失する大火を二八回も経験し、特に昭和九年三月二一日に発生した火災は、焼失一一、一〇五棟、死者が二、一六六名におよび「函館大火」として、世界大火史に残るもので、火災都市として全国的にも知られるところとなりました。大火の多かった理由として、木造建築物の密集地が非常に多かったという街並みに起因するところと、平均風速一〇m以上の強い風の吹く日が、年間の三分の一以上におよぶという気象条件によるところの二つが挙げられます。こうした経験を踏まえ、水利施設の整備充実、耐火建物の建築および防火帯の整備等、消防力の強化に努めてきたところであります。現在の当市の消防体制は、一本部三署一一出張所、職員数三六八名で各種災害に対応しております。

このたび紹介する事例は、観光地として有名な特別史跡五稜郭にほど近いホテルに併設されている機械式(エレベーター方式)駐車場において、車両を乗せるパレット部分とパレットを回転させる基礎部分に進入した車両が押し潰されるという救助事例であります。

 

一 発生日時等

(1) 発生日時

平成一一年八月一四日 一九時〇〇分頃

(2)発生場所

函館市Y町 機械式駐車場内

(3)覚知時間

一九時〇二分(一一九番)

(4) 出動車両および人員

・出動車両

指揮車一台

ポンプ車 一台

タンク車 一台

救助工作車 一台

救急車 一台

・出動人員 一七名

(5) 現場到着時間

一九時〇六分

(6) 救助完了時間

一九時二九分

(7) 要救助者

女性 五〇歳 軽症(背部打撲)

 

 

 

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