防災への架け橋
北海道支部代表 大平拓司
“防災グッズは今どこに…”そんな見出しの記事が、先日、ある新聞に掲載されていました。五年前、大きな被害を出した阪神淡路大震災、その災害を教訓に多くの人が防災用品を買い求めていました。しかし、今ではそれらの防災用品がすぐ手の届く所に置かれていないというのが現実であり、年々風化されつつある市民の防災意識、特に高齢者層の意識低下が大きく指摘されていました。
私はこの記事を読んだときに、消防人として自分には何が出来るのだろうか。また、二一世紀に向けて本格化していく高齢化社会の中で、どのように取り組んでいかなくてはならないのか深く考えさせられました。
私達は、火災予防業務として単身の高齢者宅を訪間していますが、先日、あるおばあちゃんのお宅に伺った時のことです。その家は、すっぽりと雪に覆われており、私がおばあちゃんに「屋根の雪降ろしはどうしているの。」と尋ねると、「腰が痛くて一人じゃ無理だから何にもできないのさ。」と、か細い声で答えるのです。私はひと度災害が起きたらこのおばあちゃんはどうなるのだろうと思うと同時に、近くに身内もなく、近所付き合いも少ない一人暮らしのお年よりの存在を知ったのです。こうした高齢者の人達は今後確実に増加していくので、もっと高齢者が安心して暮らせる地域社会づくりを進めていかなくてはならないと思うのです。
その為にも、市民と行政が一体となって取り組む防災まちづくりが、一層求められてくると考えます。
札幌市では、大規模災害に備えた基盤造りとして、自主防災活動の推進事業を進めてきました。その結果、単位町内会を中心とした自主防災組織の結成率が四三パーセントを超えました。しかし、全国的にみるとまだ高い水準ではありません。私はこうした地域住民による自発的な防災活動を更に活性化させ、ひとつの町内会活動として育てていくことが、今後の高齢者の安全対策にもつながると考えます。
そのためには、地域の実情に応じたきめ細かな支援が必要となります。そこで私は、ふたつの提案をしたいと思います。
ひとつめは、防災コーディネーター制度の創設です。
この制度は、それぞれの地域に住む消防職員が、防災コーディネーターとして自主防災活動に参画し、防災のプロとして私達が持つ知識や技能を積極的に提供するとともに、地域に居住する消防団員や消防OBと町内会との調整役となって、地域の力を結集し、災害対応能力の向上を目指すものです。
もうひとつは、防災ヘルプサービスの導入です。このサービスは、防災コーディネーターを核として、民生委員や町内会などとの協力体制の基、防災上の不安を抱える高齢者の相談、あるいは冬期間の除雪奉仕など、地域ぐるみでの防災ケアを実施するものです。
これらが円滑に機能されれば、高齢化社会にも十分に対応できるものと考えますし、そんな地域の心が集まって出来る街は、災害に強いだけでなく、安全で暮らしやすい活気に充ちた街に変わっていくのではないでしょうか。
私達職員は、地域の自発的な防災意識の高揚をこれからもサポートし、市民と民間企業、各防災関係機関などとの架け橋となり、グローバルな視点で消防行政を推進していかなくてはなりません。そのためにも、私自身が消防防災に関する知識や技術の習得に努め、地域住民とのパートナーシップを大切にして、多くの問題を解決していけるよう自己研鑽に励んでいきたいと思います。そして、地域住民と共に歩む消防を目指し、全力で取り組んでまいります。