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消防隊員のためのフィジカルコンディショニング

東京医科歯科大学教養部助教授 水野哲也

 

はじめに

消防隊員に限らず人が何らかの目的でその健康や体力の状態を維持、増進また調整しようとする取り組みを一般に「コンディショニング」と言います。また、一般に「コンディション」というと「今日はいいコンディションだ」とか「今日は少しコンディションが悪いな」とかいった場合に多く用いられ、それはおおむね「ある時点の体調を含めた心身の状態」をさしています。これは車に例えると車自体がドライバーの操作に対してどのように応えられる状態にあるかによく似ています。つまり、車が必要な時アクセルを踏めばすうっとエンジンの回転が上がってスピードが出せるとか、止まろうとしてブレーキを踏めば減速するとか、また曲がるためにハンドルを回せば行きたい方向にちゃんと車が方向付けされるとかいった車の機能を含めたトータルな状態をさし、これが悪いと思ったような走りができないことになります。ここでは「消防隊員のコンディショニング」と題して消防隊員が通常の業務を遂行する際、どのようなことに留意することがより良いコンデイションづくりに役立つかを簡単に解説しておくことにしましょう。

 

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図1 コンディショニングとは?

 

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図2 消防隊員のコンディショニングの構造

 

一 コンティショニングの構造

図2は消防隊員のコンディショニングの構造を示しています。簡単に説明しますと消防隊員の業務遂行時の現在の状態は図2の左側のピラミッドです。このピラミッドは大きく三つに分けられる三層構造で、その最も上段には当然、実際の消防・救助のパフォーマンス、つまりどれだけの水準の消防、救助業務が遂行できるかがあるわけですが、そのベースには消防隊員の通常の「ライフスタイル」、つまり食事の内容や喫煙状況また起床、就寝等の時刻や睡眠時間などのいわゆる一般に言われる生活様式と、その上に「消防隊員の体調や体力、精神状態そして技能術等のコンディション」があり、それらが消防、救助業務の質と量を決定づけるということです。

 

 

 

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