日本財団 図書館


平成一一年中の管内の火災件数は二五件、内建物火災は一六件で、火災の六四%を占め、住宅防火対策は急務といえます。また、発足から現在までの林野火災については、原因の六五%が「たき火」によるものであり、広報による注意の喚起が必要と判断しています。

次に、救急件数は、一、二〇四件で、平成五年の九〇二件から増加の一途をたどっています。現場到着までの所要時間が一時間以上要する地区があり、「バイスタンダー」の救命処置が患者の容体を左右することになるため、普通救命講習会の開催にも積極的に取り組んでいます。近年の救急事情の中で、当消防本部においても四名の救急救命士を養成し高規格救急車一台を運用していますが、高度救急医療の緒についた状況で、最近の医療過誤の報道や今後の救急需要を考慮すると、全職員が一丸となって救命率の向上を目指して、救命技術の研鑽に努めなければならないことを痛感します。

 

三 広報活動

当消防本部が年三回発行している広報紙「東消」は、管内各戸に配布して、火災救急の発生状況や原因等を掲載して火災救急の事故防止について呼び掛けています。そして、各町の広報紙にも防災記事の掲載をお願いしております。

火災等の緊急時の非常放送については、管内四町の防災行政無線の端末から、本署と支署でそれぞれ放送する体制をとっています。そして、毎月一日の緊急テスト放送を利用して、「火の用心」の防火広報を実施して地域住民の防火意識の高揚を図っています。また、県からの火災気象通報に対しては、特別に消防車両を出動させ、管内全域をカバーできるように広報活動を実施して、無火災期間の更新を目指しています。

管内の小中学生を対象に、「防火ポスター・習字」を募集して、学年ごとに一〇点の入賞作品を選び文化祭等に展示し、広く火災予防を訴えています。

また、これらの作品の中の一部を、愛媛県と県消防協会の防火ポスター展に応募して、毎年多くの作品が入賞しています。

 

四 災害弱者防火対策

郡内の高齢化率も三〇%に達する段階に至っており、高齢化社会における住宅防火対策として、毎年、社会福祉協議会のホームヘルパー、警察署と合同で独り暮らしの高齢者を訪問し、防火診断を実施して、火災予防意識の高揚に努めています。昨年の訪問実数は、一、一三二人で、訪問率八三%でした。高齢者からの緊急通報システムについては、現在は各町の福祉行政の中でペンダント方式等が運用されていますが、将来は消防の対応に期待されるものと考えます。

 

五 クラブの活動

東宇和幼少年婦人防火委員会は、昭和五五年に組織され、各クラブの年間行事と予算について検討し「防火意識の高揚」を目指して活動しています。

平成一一年度の各クラブの組織数は、幼年消防クラブは一六クラブ、八九六名。少年消防クラブは、八クラブ、九八名。婦人防火クラブは、四クラブ、二六九名で活動してきました。幼年消防クラブでは、毎年一二月初めに、町内を「火の用心、マッチ一本火事の元」と拍子木に合わせて合唱しながらパレードを行い、地域の人々に火災予防を訴えています。また、出初式では、日本防火協会から贈られた鼓笛隊セットを使っての「鼓笛演奏・パレード」を披露して、出初式の厳格さの中に和やかな雰囲気を醸成しています。また、防火映画教室や消防署見学をとおして、幼児期からの防火思想の高揚を図っています。

 

013-1.gif

 

少年消防クラブは、火災予防期間中の防火風船を配布しながらの街頭での火災予防広報、年末の防火餅つき大会においては、クラブ員達が杵と臼でつきあげた「防火もち」を持って、独り暮らしのお年寄りを訪問し、「火の用心!お願いします。」と呼び掛けています。夏季の野外活動では、人工呼吸法や救急法を学びながら、海水浴場での集団生活の体験をとおして、クラブ員同志の交流を図っています。このような活動を通して、防火意識を毎日の生活の中で習慣として欲しいと願っています。近年、クラブ員数が減少傾向にあるため、今年度から四年生以上を対象とすることで、増員を計画しています。

婦人防火クラブにおいては、毎月一五日を「婦人防火の日」と設定しクラブ員二、三名が消防車両に同乗し町内を巡回して、火災予防を訴えています。明浜町の女子消防隊は、毎月のポンプ点検、夏季幹部訓練の実施、独り暮らしの高齢者訪問など日頃の防火活動はもとより消防出初式への参加、軽可搬ポンプでの全国婦人消防操法大会への出場など地域に根ざした防火活動に取り組んでいます。

 

おわりに

消防職員四七名の小規模な消防機関ですが、職員の知恵と行動力を結集して、「いま、消防は、如何に在るべきか」について、原点に立って再考する必要があること、そして、消防業務の質的向上を中心に据え、この視点に立った「自治体消防の特殊性」を積極的に推進していく事が「住民の負託」に応える方法ではないかと考えています。

(中野竹夫)

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION