日本財団 図書館


特定行為の指示については基本的に二四時間常時医師から指示が得られる体制を取り、通報時にCPAが必要と判断される場合は事前に医師の待機要請を病院側に依頼して指示を待つまでの時間短縮を図っている。また、後で述べる病院実習の成果により、医療機関関係者と救急救命士との間で信頼関係が着実に積み重ねられ、スムーズな連携をとることができている。メディカルコントロールも徐々に形作られてきており、現場での業務の充実に繋がっている。

 

四 救急救命士の病院実習について

救急救命士における研修については、就業前研修(一六〇時間)及び生涯研修を主に手術室、HCU、ICU、救急室等にて行っている。特に生涯教育については救急救命士各自が月二回(年間一五六時間)を約二カ年にわたり継続して実施し、これら実習の成果は数字にも現れている。特に静脈路確保については顕著である。将来においては更に高度なメディカルコントロールを目指した研修としていきたい。

 

012-1.gif

 

また、救急救命士だけではなく標準課程及びII課程修了者における研修についても救急隊の質の向上のため適時実施している。症例検討会については年二〜三回各隊から症例を提出し、専門医を署に招き救急隊員に限らず全職員対象のもと開催され、今後の現場活動のため大変役立っている。

しかし、研修についてはカリキュラムに不十分な面もあり、隊員の資質に応じた教育が完全にはできない部分もある。また、変化のない研修になってしまいがちなため目標が曖昧になってしまうなどの課題も残されている。

 

五 最近の救急事例

平成一二年三月二八日午前九時二〇分頃二六歳の男性が電柱上にて電気工事作業中に感電し、受傷。救急隊到着時、同僚らにより地上に降ろされCPRが実施されており、意識はJSC三〇〇、顔面は軽度のチアノーゼが見られ呼吸は喘ぎ様(一〇数秒で消失)、脈拍は総頸動脈にて触知できず、瞳孔散大(六mm)、モニター上にて心室細動を確認、除細動を実施するが波形はフラット、ただちに救急隊によるCPRを開始するとともに、コンビチューブによる気道確保を実施する。途中、モニター上の波形を確認、四二回/分を示すが総頸動脈にて触知できないためCPRを継続する。現着より一二分後に特定行為を完了し、ただちに搬送を開始する。

病院到着時には脈拍は触知可能であるが呼吸状態は変わらず、医師による薬剤投与の後しばらくしてから自発呼吸が見られ、モニター上でも一〇三回/分の洞調律を確認、瞳孔も三mmに縮瞳する。

四月末現在、ICUにて治療中である。

 

おわりに

当市においても救命率・社会復帰率の向上という点においては全国の例に洩れず、救急救命士の配置前後で明らかな向上は認められず、依然として低い数字となっているのが現状である。しかし、各救急隊のレベルはこの数年で確実に向上しており、救急救命士以外の隊員一人一人も知識、技術の向上は当然のこと、救急業務に携わる者としての自覚と意識の高揚が図られている。また、市民に対しての応急手当普及啓発活動に関してもより積極的に取り組み、プレホスピタルケアのより一層の充実を図り、バイスタンダー及び医療機関との確実な連携をとる必要がある。

救急隊の日頃の努力と活動が今まで以上に市民に認められ、今後の処置拡大へとつながり、新しい道が見えてくることを望みたい。 (小澤 剛)

 

予防・広報

「災害に強いまちづくり」を目指して

東宇和消防本部(愛媛)

 

はじめに

当消防本部は、東宇和郡内の明浜町・宇和町・野村町・城川町の四町の、一部事務組合として昭和五三年四月に発足しました。東宇和郡は、愛媛県の西南部に位置し、世帯数一四、三〇五戸、人口は三九、二〇〇名、面積四七三km2におよぶ広範な圏域を擁しています。「全国かまぼこ板の絵」展覧会の城川町、大相撲力士「玉春日関」の出身地野村町、愛媛県歴史文化博物館のある宇和町、リアス式海岸の美しい明浜町の四つの町が、東西四〇km、南北一二kmにおよぶ帯状に長い地域を構成しています。

 

一 消防力

当消防本部は、一本部一署一支署、亀田消防長以下四七名の消防職員が、二交替制でポンプ車一台、タンク車一台、救助工作車一台、指令車一台、高規格救急自動車一台(予備救急車一台)を本署、支署でそれぞれ運用して、管内の消防事象に対応しています。

また、消防団は、各町一団で四団、二〇分団あり団員一、五二六名により組織され、各町単位で常備消防と連携して防災の任に当たっています。

 

二 自主防災

過疎化と高齢化の進展に加えて、共働き家庭の増加、居住地外への通勤、少子化という社会事情の中で、昼間の時間帯に防災の担い手である消防団員の不在という深刻な状況や団員確保の問題に対処するために、各町においても自主防災の組織づくりの糸口(消防団OBを中心とした地域防災組織等)が見られる現状にあります。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION