当本部は、福岡県の北東部に位置する行橋市(人口約七万人、面積六九・八三六km2)を管轄する単独消防本部である。
行橋市は、はるか昔より「美夜古」と呼ばれ、文化、政治の中心地として栄えてきた。市内には、御所ケ谷神籠石(六〜七世紀頃)やビワノクマ古墳(五世紀前半)など多くの史跡が残り、伝説の雄神、須佐之男大神を祀った須佐神社では、夏の祇園祭に全国でも例を見ない奉納連歌が亨禄三年(一五三〇年)以来続いている。現在では、北九州国際技術情報都市圏の一翼を担う京築地域の拠点都市としてその活躍が期待され、行橋駅周辺の整備も進んでいる。
消防本部の横を流れる今川の河畔では、春は菜の花、秋にはコスモスが咲き乱れ、訪れる人を迎えてくれる。市内には、この今川をはじめとして長峡川、祓川などいくつもの河が流れ、四〇〇以上もの大小様々な橋が点在しており、街の代表的な風景となっている。
東部は、穏やかに波うつ周防灘に面し、漁港や海水浴場として賑わいを見せている。西部は、なだらかな北豊連山が広がり、イチジクやもも、巨峰などフルーツの栽培も盛んで、豊な自然と快適な都市機能が共存する街である。
消防本部は昭和三四年に発足し、現在は一本部一消防署、五六名の署員と五八〇名の消防団員で構成され、平成一二年度からは職員四名の増員も決定したところである。
★増加する救急出場への対策
当本部も、例外にもれず救急出場件数が増加の傾向にあり、限られた体制の中で対応に苦慮しているとのことであるが、この状況を受け本部では、一一九番受信時に通報者に対して救急車到着までの応急処置方法の指導や小中学校の生徒・父母あるいは農協の団体等を対象にした救命講習を実施するなど、バイスタンダーの育成を念頭に積極的に対応している。
平成一一年度からは高規格救急車が運用開始となり、救命士も現在の三名から将来的には六名となる予定で、市民から厚い期待がよせられている。
また、各ろうあ者家庭に障害者団体からの要請で、ファクシミリ電話が市役所から配布されたことから、消防本部では、指令室に受信専用電話を設置し、ファックス通報カードを作成するなどろうあ者が安心して一一九番通報でき、円滑な救急車の運用が可能となるような体制が整備された。
★地域に密着した広報活動
毎年、春の火災予防運動期間には、カルスト台地として有名な平尾台の登山道入口で消防演習を実施し、登山者に火災予防を呼び掛けている。夏には市の主催するサマーフェスティバル「こすもっぺ」に参加し、うなぎ掴みやロープ登りなどのコーナーを設け、防災意識の高揚を図るなど広報活動にも力を入れている。
また、過去の統計から六日の日に火災が集中していることから、毎月六日を「防火高揚の日」と定め消防団との合同放水訓練や消防団幹部との会合を開き対応策等の検討を行っている。