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地形的には平野部と山間部に二分され平野部は、大阪都心部からも近く通勤圏に含まれ、人口が増加して都市的な環境を形成している。又、山間部は、自然環境の保存と名阪国道沿いに開発が進み生活環境が拡充されている。

この両地域の中心部に宗教都市天理市があって、天理教教会本部で催される毎月次祭をはじめ春季大祭時には全国各地から信者が帰参し門前町として活気に満ちている。

当組合は、一市三町三村で構成され、管内の人口は一三五、八八六人、総面積二四九・二八km2である。

消防体制は一本部四消防署一分遣所、職員数一八一名で各種災害に対処している。

ここで紹介する事例は、阪神工業地帯と中京工業地帯を結ぶ名阪国道下り車線(大阪行き)において、大型トラック等九台の関係する追突事故における救急・救助活動事例である。

 

一 発生日時等

(1) 発生日時

平成一一年一〇月六日(水)午後四時〇〇分頃

(2) 発生場所

奈良県山辺郡山添村大字三ヶ谷一八五三−一六

名阪国道大阪行き車線(七二・二kmポイント)

神野口インター西方五〇〇m

(3) 覚知時間

午後四時〇四分

(4) 出動車両及び人員

山添消防署救助隊四人、救急隊三人、消防隊(タンク車)三人、月ヶ瀬分遣所消防隊(ポンプ車)四人

現場指揮隊により応援要請

天理消防署特別救助隊三人

天理消防署救急隊三人

都祁消防署救急隊三人

(5) 現場到着時間

午後四時一七分 山添消防署救助隊・救急隊・消防隊 月ヶ瀬分遣所消防隊

午後四時四五分 天理消防署特別救助隊・救急隊 都祁消防署救急隊

(6)救助活動完了

午後四時五二分

(7) 負傷者の状況

重傷 一名

軽傷 一四名

(8) その他の車両

奈良県高速交通警察隊パトカー

名阪国道管理事務所

 

二 事故発生の状況

この事故は、工事により車線規制で渋滞のため停車していた車両の列に、大型トラックが追突し、普通トラック三台、普通乗用車三台、軽四トラック、軽四乗用車の計九台の車両が関係する事故で、大型トラックに追突された普通トラック(二t車)の運転手が車内に閉じ込められ救助を要したもので、他の車両を含め一五名の負傷者が発生した事故である。

 

三 現場到着時の状況

事故現場は、登り勾配(五・〇%)で片側三車線の左端の登坂車線に普通トラック(一t車)、普通乗用車、普通トラック(二t車)、大型トラック(一〇t車)の順に追突した状態のまま停車しており、その前方に三台、右側走行車線に一台、後方に一台の車両が少し離れて停車していた。

この事故により更に約一km渋滞が延び奈良県高速交通警察隊の到着が遅れるのが予測されたため、直ちに現着した各消防隊により交通規制を実施、更に各車両からの燃料漏れ等の確認、事故車両への車輪止め及び負傷者のトリアージを実施した。救急隊及び救助隊の状況確認の結果、大型貨物車に追突された普通トラック(二t車)のキャビン部が大破し、運転手が座席とダッシュボード及びハンドルポストに腹部及び左下腿部が挟まれた状態で顔面が挫創し激痛を訴えていた。

 

四 救助活動の状況

要救助者を救出するため、前方の普通乗用車、普通トラック(一t車)を引き離しに掛かる。まず普通乗用車と普通トラック(二t車)に車輪止めを固定し、普通トラック(一t車)にワイヤーロープを掛け、消防車で牽引して引き離す。続いて同じ要領で乗用車を引き離し救出できる状態とした。普通トラック(二t車)のハンドルポストにワイヤーロープを掛け一方を消防車に固定し、チルホールで徐々に牽引により拡張すると共にバール及びポートパワーにて運転席側ドアを開け要救助者を励ましながら、後着の天理消防署特別救助隊の空気式大型油圧スプレッターで座席とダッシュボードを拡張し引き出し可能となったため救助隊員が抱きかかえ車外に救出し、待機中の救急隊により病院へ搬送した。

 

 

 

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