最先着と同時に長期戦が予想されると判断し、地元消防団(全分団)の出動要請を行い消防隊の増援を図り、河川からの中継体制を整え包囲体制を完了した。
しかし、台風の影響による強風で高さ一〇mに野積された集積物の一部分は思うように消火が進まないため、指揮本部において、多量の集中放水と燃焼物の除去を行うことを決定した。消防相互応援協定による鹿児島市消防局の高所屈折放水車の放水で、一時的には火勢を抑えることは出来たものの、余りにも高く積まれた燃焼物は再び火勢を取り戻したため、消防隊の注水のもとパワーショベル三台にて燃焼物を除去しながら、夜を徹しての消火活動が行われ、完全消火まで二六時間を要したものである。
火災は、パワーショベルに乗車していた自営業者が遠隔操作により廃棄車両の解体切断作業を行っていた際に発生した。その火は、更に周囲に野積されていた古タイヤに燃え移り一気に延焼拡大した。発生時、自営業者は四本の消火器により消火を試み、一時的には下火になったものの火勢が再び強くなり功を奏さず、携帯電話で事務所(鹿児島市)へ消防車の要請を行っている。要請を受けた事務員は、加入電話で当消防本部へ通報したため、覚知までかなりの時間を要している。
敷地内には、主に県道沿い入口南東側から南西側にかけて廃車が、又北東側から北西側にかけて古タイヤが置かれているものの、その区切りもなく敷地全面に野積状態にあった。最先着隊は、人命の安全を確認後、東側に隣接する土木作業所の事務所兼倉庫への延焼防止を優先し消火活動に入った。その後、増援隊が到着し包囲体制を完了したものの、現場周辺には先着隊が中継に使用した消火栓しかなく、後着隊は、現場から約一、〇〇〇mの河川(低位約四〇m)への部署を余儀なくされた。更に、消防団による中継送水については、殆どが軽可搬ポンプであったため、中継ポンプ同士の送水圧等の連携に苦慮した。又、現場の筒先隊はタイヤ等から発生する黒煙や悪臭或いは、廃車車両のエアーバッグ等のボンベ破裂からの爆発音の鳴り響く中、組織的な防ぎょ活動が長時間に亘って展開された。
おわりに
本件の火災の場合は、消防水利に恵まれず、更には台風の影響も重なり、限られた消防隊の活動のため、包囲隊形にかなりの時間を要した。よって、この種の火災が一旦発生すると、火勢拡大及び長期化することは必至である。しかしながら、同様の火災は、社会経済発展に伴い年々増加の傾向にあるが、その都度消防機関の指導にもかかわらず、関係者の認識不足が後を断たない。そこで、我々消防は今後も積極的な指導の積み重ねが大事であり、今回の事例を踏まえ消防体制、事前計画の樹立等を図らなければならない。そのために、我々消防は日々研鑽のもと、火災予防措置等を含めた各種対策を講じる必要がある。
(木場栄光)