火災
廃車及び古タイヤ集積場における火災
日置地区消防組合消防本部(鹿児島)
はじめに
当消防本部は、鹿児島県の薩摩半島のほぼ中央部に位置し、山間地帯が多く河川流域に平地が開け、西部一体は海岸平野をなし、西部海岸は名勝「吹上浜」の一角を占め、千里茫洋とした東シナ海を背景に白砂青松の地からなり、市来町・東市来町・伊集院町・松元町・郡山町・日吉町・吹上町の日置郡内の七ヶ町で構成され昭和五七年に発足している。
管内人口は、八一、〇七九人、面積三九三・三三km2、一本部一署二分遣所で職員八七名の組織であり、一昨年、消防緊急通信指令施設の更新を図り、地域住民の期待に応えるため、消防力の充実と防災体制の強化に努めている。
今回、ここに紹介する事例は、これまで全国の各地で発生している廃車等の集積場の火災ですが、当消防本部ではかつて経験したことのない長時間を要した火災である。
一 火災概要
(1) 発生日時 平成一一年九月二二日(水) 一五時四〇分頃
(2) 覚知日時 平成一一年九月二二日(水) 一五時五四分
(3) 鎮圧日時 平成一一年九月二三日(木) 五時二二分
(4) 鎮火日時 平成一一年九月二三日(木) 一七時二一分
(5) 発生場所 日置郡伊集院町竹之山一九〇番地一
(6) 気象状況
天候 曇り 気温三〇・三度 湿度六三・七%
風向風速 南南東五・五m 最大瞬間風速 一一・九m
雷強風波浪注意報
(7) 被害状況
人的被害 なし
物的被害
廃車一、五〇〇台 古タイヤ二〇、〇〇〇本 固定式スクラップ切断機一基 パワーショベル二台 タワークレーン一基 隣接する山林の杉(二五年生)一一五本
(8) 出火原因
燃料タンクの残留ガソリンに廃車を切断中生じた火花が引火したもの。
(9) 出動車両及び人員
消防署 水槽付ポンプ車等 六台 五〇名
消防団 ポンプ車等 二四台 二九二名
消防協力機関 鹿児島市消防局 高所屈折放水車 一台 四名
二 施設の概要
火災現場は、伊集院町の東部で、隣接する鹿児島市との境、県道二〇六号線沿いに位置する車両解体業(廃車等)の集積場である。敷地は、約三、八〇〇m2あり、入口より三〇mの所に固定式スクラップ切断機が置かれ、それを取り囲むように敷地全面に廃車及び古タイヤが野積されていた。また、周囲の二方(北側、西側)は山林に囲まれ、東側は境界線のフェンスを隔て土木作業所の事務所兼車庫(鉄骨スレート造平屋建三〇〇m2)が建っている。同事業所の消防用設備としては、粉末消火器五本、十単位が設置されていた。
三 活動状況
覚知後、消防署から水槽付ポンプ車等が出動するが最先着時の火勢状況は火炎と黒煙が勢いよく上昇し、おりからの強風により延焼媒体へ移行拡大中であった。また、先着の中継車両の使用した現場から約三〇〇mの消火栓一基の他には、のぼり勾配の約一、〇〇〇mの距離に自然水利(河川)があるのみで、水利の便が悪く、更に台風一八号接近の影響が防ぎょ活動の阻害となった。