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各市町村は効果的な災害対応活動を展開しているところであり、こうした現状を的確に反映していく必要があるのではないか。

○ 都市構造の変化等に伴う消防活動の変化を反映していく必要があるのではないか。

このような課題を専門的に検討するため、消防審議会に「消防力の基準に関する小委員会」が設置され、当該小委員会は平成一〇年一〇月から平成一一年三月までの間に計四回開催されました。

小委員会には、消防審議会の委員から吉村秀實(小委員会委員長)、重川希志依(小委員会委員長代理)の両氏が参画されるとともに、五十嵐幸男上田市消防団長の他七名の委員で構成され、第一回から第三回までの小委員会の検討結果を平成一一年二月一八日に開催された消防審議会に中間報告されました。さらに、第四回小委員会の検討結果を踏まえて、平成一一年三月一八日に開催された消防審議会に小委員会として最終報告され、これについて消防審議会における審議を経て、同日消防審議会会長から消防庁長官あてに答申を頂きました。

答申では、広く国民に受け入れられるであろう消防力の水準を想定することとして、消防活動の実態調査によって得られたデータについて統計的な分析等を行うことにより、都市構造、消防活動の実態に即したより合理的な基準とするための具体的な改正の指針が逐条的に提示されました。

このように「消防力の基準」の見直しについては、従前から継続的に行っていた消防庁内を中心とした実務的な検討に加え、消防審議会の場において委員の方々に広い見地から審議して頂き、基本的な観点からの見直しを行いました。その結果、改正箇所がほぼ全条文及び全別表に及んだことから、全部改正することとしました。

一方、消防水利の基準及び消防団の装備の基準は、消防力の基準が改正されたことに伴い、当該基準との整合性を図るため、「密集地」という用語を「準市街地」に改めるなど所要の一部改正を行いました。

 

三 改正の視点

ここでは改正の視点について、「消防力の基準に関する答申」の中にあった「改正の方向性」と題する模式図(本誌解説のため一部改変)を使って解説します。

別図1において、長方形で描かれた基準とは国の示す基準に相当し、楕円はそれをもとに導いた市町村の基準数値に相当します。

消防ポンプ自動車の配置台数を例にすれば、「改正前の基準」では、国の示す基準として第四条によって市街地人口一〇万あたり一二台という形で画一的に定められており、さらに第九条の三のいわゆる弾力条項によって地域の実情に応じて、この配置数を増減できるというように二段階の規定(配置の基準数+弾力条項)になっていました。

また、市町村の基準数値の決定にあたって、長方形で示される基準に対して、楕円で示される弾力条項の適用範囲が相当広い状態になっていました。例えば、「改正前の基準」では、救急自動車の配置基準台数は、管内人口一五万未満の場合、人口五万につき一台でしたが、増加する救急需要に対応するため、市町村においては、弾力条項を使って配置台数を引き上げて算定していました。

これに対して、「新基準」では次のように改めました。基準本来の性格からして、市町村の基準数値には、市町村が判断する余地が含まれているものであるという方向で、改正前の二段階の規定を改め、配置数を算定する規定そのものに答申で示された市町村による地域の実情の加味を盛り込みました。

市町村による地域の実情の加味については、「新基準」の条文中では、地域における諸事情又は地域の実情という用語が該当しますが、救急自動車における出動頻度等、化学消防車における市町村に存する製造所等の数等、予防要員における市町村の区域の面積等のように、条文中で具体的に例示しているものもあります。

また、実態に即して基準そのものの適合性を向上させるということも「新基準」に反映されています。長方形で示される基準について、「改正前の基準」と「新基準」を比較すると、後者の方が大きくなっています。例えば、「改正前の基準」では、市街地に該当しない地域には署所の設置基準がなく、これらの地域に署所が設置されていても基準外署所等(○印)と扱われており、模式図では長方形の外にありました。

 

 

 

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