「消防力の基準」の改正について
消防庁消防課
一 はじめに
平成一二年一月二〇日消防庁告示第一号をもって、消防力の基準(昭和三六年消防庁告示第二号)の全部が改正されました。なお、この改正に伴い、消防水利の基準(昭和三九年消防庁告示第七号)及び消防団の装備の基準(昭和六三年消防庁告示第三号)について、それぞれ用語の整理等の所要の規定の整備を行いました。
二 改正の経緯
消防力の基準は、全国各地で市街地大火が頻発していたという時代背景を受け、国としてできるだけ早く市町村の消防力の増強を推進するために、昭和三六年に制定されました。その後、これまでに五回の一部改正を経て、消防力の充実強化に大きな役割を果たしてきました。
「消防力の基準」改正経緯
(1) 昭和三六年八月一日「消防力の基準」告示
昭和三五年八月二五日消防審議会答申
(2) 昭和四六年六月一〇日改正
消防機器の性能向上を考慮するとともに、危険物施設の増加等新たな消防需要を考慮し、改善合理化を図った。
(3) 昭和五〇年五月三一日改正
昭和五〇年二月「消防力の基準」調査研究会(会長:消防庁次長昭四九・四設置)報告
昭和五〇年三月一九日消防審議会答申 昭和五〇年における主な改正内容
ア 総合的基準とするため、救急業務の基準を設けたほか、救助業務についても規定した。
イ 動力消防ポンプの配置基準を地域の実情(延焼危険)に応じて増減を可能とした。
ウ 携帯無線の普及、装備の性能向上等を考慮し、ポンプ車等の操作員数を減じた。(消防ポンプ自動車:七→五人、小型動力ポンプ:五→四人等)
エ 予防業務の重要性等を考慮し、予防要員を単独に算定するとともに、算定式を改め増強を図った。
(4) 昭和五一年七月五日改正
石油コンビナート所在市町村について、三点セットの配置基準を追加した。
(5) 昭和六一年一〇月一日改正
救助隊の編成、装備及び配置の基準を定める省令制定に伴い救助隊配置基準を追加した。
(6) 平成二年一月二五日改正
危険物規制関係の法令の改正や危険物の生産実態の変化等を踏まえ、化学消防車算定の対象範囲を拡大した。
しかし、近年の都市構造の変化、消防需要の変化、さらには地方分権の動きに対応し、市町村の自主性を尊重した、より実態に即した合理的な基準に見直す必要性が生じていました。近年、消防本部からも見直しに関する意見が多く寄せられ、平成一〇年一〇月には、全国消防長会からも消防力の基準の見直しに関する要望書が提出されました。
こうした中で、平成一〇年一〇月一九日、消防庁長官から消防審議会に対して消防力の基準の見直しを諮問しました。ここでの審議課題は次の四点に集約されました。
○ 市町村の消防力が必要最小限度の水準を満たしていると考えられる今日、市町村の消防力については、市町村がそれぞれの地域の実情に応じて総合的に判断していくことが必要ではないか。
○ 高齢化等の進展に伴い、救急業務への需要の増加が示すように消防への期待は高まりつつある。比較的人口密度の小さな地域に対しても高度な消防サービスを提供する必要が生じており、こうした現状を的確に反映していく必要があるのではないか。
○ 消防力の基準に基づく消防職員の基準数と実態には大きな乖離がある。