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仁淀消防組合消防本部(高知)

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今回は、高知県の仁淀消防組合消防本部を取材した。当本部は、高知市の西隣、伊野町にあり、高知市からは路面電車やバス、JRで行くことができる。伊野町は、清流仁淀川に面しており、紙と水のまちと呼ばれ、国の伝統的工芸品である土佐和紙の生産地として知られている。「紙の博物館」、「土佐和紙工芸村 くらうど」など土佐和紙の歴史、文化を知り、和紙作りを体験できる施設が町内にある。また、紙と水のまちらしく、ゴールデンウィークには町内を流れる仁淀川を紙で作った色とりどりのこいのぼり約一〇〇匹が川の中を泳いでいるのを見ることができる。消防組合は、伊野町、春野町、日高村、吾北村で構成されており、菜の花やあじさい、コスモス、もみじなど、管内は四季を通じて楽しむことができる。平成一四年には、管内で国体の開催が予定されており、今後ますますの発展が期待されている。

当本部は、それまでの非常備消防団員に依存していた体制を消防防災及び救急業務の充実強化を目指して、昭和四八年三月に四ケ町村からなる消防行政の一部事務組合を設立した。発足当初七人だった職員も現在は七〇人となり、五八八人の消防団員と共に地域の防火防災業務を担っている。

★過去の大災害

四国高知は台風被害の多い所、中でも昭和五〇年八月一七日の台風五号による被害は大きかった。中心気圧九六〇HP、最大風速四〇mという強い勢力を持ち、記録的な集中豪雨となった。河川増水、山崩れ、土石流がいたるところで発生し、その被害は、死者・行方不明五三人、家屋の全壊・流出二八七戸、半壊・床上浸水五、九二七戸というものだった。消防では、救出救助や監視警戒等行い、復旧活動でも消防団員が活躍した。被害の大きかった吾北村では、当時の消防団長が「自然は生きている」と書かれた水位を示す碑を建て、災害の怖さと助け合いの心の大切さを後世に伝えている。

★水難事故の絶無を目指して

管内を流れる仁淀川は、四国の最高峰石槌山(標高一、九八二m)に端を発し、太平洋に注いでおり、全流域面積は、一、五六〇km2の一級河川。四国では、吉野川、四万十川に次ぐ大河川である。この地では、仁淀川の恩恵により、昔からアユ漁や和紙作りが盛んで、近年は、アウトドアブームもあり、キャンプやカヌーで、この地を訪れる人も多い。このように様々な恩恵を地域にもたらしている反面、水難事故も後を絶たない。当本部では、水難事故に対処するため、救助艇や救助資器材の充実に努めており、年一回、団、警察、県との合同で訓練を行っている。訓練では、遊泳中に人が流されたとの想定で、防災ヘリや救助艇を使った訓練を行い、捜索要領や救出・救護要領、関係機関相互の連携要領等訓練している。河川での捜索では、早期の対応が大事とのこと、大量の人員を早期に投入し捜索にあたる。また、河川で流された場合には、河川の流れに逆らわず、体力を温存するのが良いとのことである。

★常備消防として生き残るために

門田消防長に今後の方針等についてお聞きした。「職員の人員増が期待できない状況では、職員の資質の向上を図らなければならない。常備消防と消防団の役割分担が必要だ。今後、常備消防として生き残っていくためには、救急・救助を充実させていかなければならない。現在、救急救命士が五人いるが、最終的には一六人にして、各隊に救急救命士を入れたい。防災航空隊や消防学校にも積極的に職員を派遣し、資質の向上を図っていく。災害は、消防団と協力して対処する。中継訓練等連携作業を、各消防団と計画的に訓練していく。また、住民の安全を守るためには、自主防災組織を含めた予防行政を行っていきたい。」と語ってくれた。 (大橋実)

 

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仁淀川を遊泳する紙のこいのぼり

 

 

 

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