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亀山市消防本部(三重)

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名古屋駅で関西本線に乗ると、一時間ほどで亀山駅である。ここは、JR東海と西日本の境界、関西本線の玄関口・紀勢本線の起点駅で鉄道交通の要所である。ここから徒歩一二〜三分で真新しい消防庁舎に出会う。当本部は、三重県北中部に位置し鈴鹿山脈で滋賀県と接する内陸型の地方都市で、昭和二四年に職員四名で発足した。その後、合併で市となり、五四年に関町の事務を受託して、現在一本部二署六七名、消防団は、二団一一分団(亀山市七、関町四)三八五名の陣容で、面積:亀山市一一一・〇三km2、関町七九・八八km2、人口:亀山市四〇、一〇〇人余、関町七、五〇〇人余の消防防災を担っている。

★管内の特性

当管内は、伊勢亀山城城下町であり、旧東海道が横断する宿場町であって、関宿分は、郵便局や駅舎の建築物も工夫され、電線も地中化して木造連子格子や白壁塗の町並みが保存されている。亀山市の文化財は、亀山城多門櫓等八五点余。関町には、地蔵院愛染堂等一五点余の指定があり、当本部は、この歴史の町を地域住民と一体となり火災予防に力を注いでいる。

鳥居のこと:伊勢神宮二〇年遷宮の都度、建て替えられた鳥居が亀山宿場通りに移築されている事実とは別に、駅前ロータリーの鳥居には、能褒野神社とある。約五キロ離れて《日本武尊御墓》(前方後円墳長さ九〇メートル)があり、側に日本武尊を祀った社があり、歴史を身近に感じた。

北に安楽川、南に鈴鹿川、支川もあって記録によると台風の通り道で水害は多い。それに、国道一号線や、三〇六号線、名阪、東名阪、伊勢線など高速交通網の発達とともに重大事故の発生が危惧されている。

★過去の災害

東海地方には昭和三四年の伊勢湾、三六年第二室戸、五四年の二〇号、五七年の一〇号等の台風がそれぞれ上陸しているが、四九年には、時間雨量一〇一ミリ、午前中だけで三八○ミリの集中豪雨に見舞われて堤防決壊等の被害を受け、災害救助法が適用された。最近では、六三年の一三号台風により鈴鹿川に架かる山下橋が流失したのが最も大きい被害であると糸井総務課長が当時の資料に目を転じた。

★軽油流出事故の教訓

さらに、近年教訓を得た事例として、平成一〇年七月国道一号線鈴鹿峠下り勾配でタンクローリーが横転し、軽油二〇kl全量が沿道の側溝を経て鈴鹿川に流入した。これにより一六日間にわたってバキュウム車や吸着マット、それにオイルフェンスは、関町地内八、亀山、鈴鹿地内各二、四日市及び楠地内各一ヶ所に設置するに及び、その間に四日間の集中対策に消防職・団員等延べ約一、六〇〇名が携わった。この事故の教訓は、

1] 夜間オイルフェンス展張のための足場の確保

2] 堰等落差があるとマット回収が難しく対応機材が必要

3] 流出物質の緊急分析機関

4] 交通事故で劇毒物を河川に流出させない検討

5] 指揮命令系統確立等、この作業に従事した糸井課長・早川係長が当時に思いを馳せ熱っぽく語られた。

★親しまれる消防を目指して1

平成九年四月から運用の庁舎は、一階が亀山消防署、二階が消防本部で、いずれもエントランスホールが広く事務室の奥まで一望でき境界の腰壁を感じさせない開放感がある。

本部のホールは、防災展示プラザとして四台のコンピュータやVTR装置が設置されており、ゲーム感覚で利用できるよう開放されている。さらに、住民が講習や訓練をする際は、保育OK等住民を主体とした気配りが随所にみられる。消防に親しみを持ってもらうことが大事と言う三宅消防長の精神が、職員に浸透しているように感じられた。

★消防長の方針

職員には、何か一つエキスパートになること。そのうえで、何にでも協力出来ること。それと、何をやるのだと言う問題意識と使命感がレベルアップにつながると説いており、そのことが組織力の向上につながる。一方、装備面は、救助工作車、高規格救急車が整備され、万全に近いが、それでも限界がある。「自分たちの地域は自分たちで守る」という助け合いの精神で防災行動力を高めるよう、自治会や婦人会、企業にも一層積極的に働きかけ、防火防災の総合力を更に高めたいと結んだ。 (武藤國造)

 

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