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海外消防情報

Overseas Fire Information

 

2010年の消防を占う

最近米国イリノイ州ショーンバーグで開催された米英消防幹部年次シンポジウムで二〇一〇年の消防技術を題とする論文の発表と討議が行われたが、その中で次のような意見があった。

コンピューター指令管制、車載デジタル・コンピュータ、自動車両位置確認システム、エアモニター装置、非常警報器、.赤外線カメラ装置等各種の機器にコンピューターが使われている。

コンピューター遠隔通信ネットワークの発達により、二〇〇三年には電子データ通信が主流となり、音声通信は二%以下となる。地球規模の通信の費用は大きく下がる。

住宅用スプリンクラーはすでに一部の住宅に設置されているが、更に一般の家庭に広く普及する。

消防隊が災害現場に到着すると、コードをビルのコンセントに差し込んで内部で発生した火災等の正確な場所及び高熱と煙の状況を把握し、火災感知設備や消火設備の作動状況を確認し、ビル内部の配置図を取り出して進入隊員の頭部ディスプレー装置に映し出し、空調設備を調整し、進入隊員からの情報を無線機又はファイバーオプティック装置で指令センターに中継する。

無線機により全隊員に指令が出される。全隊員のヘルメットか呼吸器に赤外線カメラが装着される。

非常警報器は、隊員の所在と脈拍、呼吸、体温などの生存兆候、気温とその上昇率をモニターして送信すると共に頭部ディスプレー装置に表示する。また、火災現場における大気の状態をモニターしてデータを分析する。

生命兆候感知装置(LSDS)により災害現場前の路上から要救助者を発見して、その正確な位置を把握する。

消防活動スキャナー(FOS)により火災の位置と延焼状況、建物崩壊の有無等を確認して効果を最高にするための注水箇所又は電子消火装置の目標箇所を指示する。危険度の高い区域にロボット消火装置を使用する。

電子装置により出動隊に危険物の種類、性状及び処理方法、送り主、受取人等を知らせ、危険物の漏洩等の事故が発生した場合には危険物処理隊の出動を要請する。

大規模なシミュレーション室で教官の指導の下にコンピュータを利用した個人的な指導に力を入れて、バーチャルリアリティをより一層活用し、高温熱気、暗闇、急速に変化する火災の状況等における人命検索、各種の消火剤の放射方法等現実的な訓練をする。

相互応援体制が充実して大災害の際に地方自治体から広域、州、国へと総合的応援活動が展開される。広域指令センターにより人員及び機材がより効果的に活用される。

今後一〇年間は、過去の一〇年間より一層多くの改善する機会に恵まれると思われるが、全ての関係者の協調と努力により、どれだけ消防業務を改善し、消防隊員の安全を確保することができるであろうか。

(文責 大野春雄)

 

 

 

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