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救急・救助

高速自動車道箱桁内シンナー中毒事故

大分市消防局(大分)

 

はじめに

大分市は、九州の東端、瀬戸内海の別府湾に面し、人口四三万人余り、面積三六〇km2を有する大分県の県都である。県下を代表する水量豊かな大野川、大分川の二大河川が南から北に向かって貫流、大分平野を形成し、雄大な別府湾に注ぎ、その平野を野猿で有名な高崎山などの山々が背後から取り囲む、豊かな自然に恵まれた都市である。

当市は、二〇〇二年ワールドカップサッカーで九州唯一の開催都市として注目されている。

当局の消防体制は、一本部三署八出張所、職員数三七八人で消防の任に当たっている。

ここで紹介する事例は、東九州を縦断する東九州自動車道「大分米良IC」から「大分宮河内IC」間の大野川橋梁工事現場で、橋の箱桁内部において塗装作業中の作業員数名がシンナー中毒症状を起こした事故で、救出までに長時間を要した救急救助事例である。

 

一 事故の概要

(一) 発生日時 平成一一年七月一日(木) 一八時〇〇分頃

(二) 発生場所 大分市大津留東九州自動車道大野川橋梁工事現場

(三) 覚知時間 一八時一四分(一一九)

(四) 現場到着 一八時二五分

(五) 救助活動完了 一九時四〇分

(六) 出場隊・人員・台数

東署指揮隊三名 一台指揮車

東署消防隊四名 一台水槽付P車

東署救助隊四名 二台水槽付P車工作車

東署救急隊六名 二台高規格車 二B型

南署救急隊三名 一台二B型

東署支援隊二名 一台資機材搬送車

 

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二 現場到着時の状況

箱桁入口で自力脱出者二名と接触、状況を聞くと箱桁内にまだ三名の作業員がいるとのことで、内部構造を工事責任者に確認、進入口から五〇m位は比較的容易に進入出来るがその奥は非常に複雑な構造で、多数の隔壁があり作業員三名は隔壁内部にいる可能性が高いとの情報を得た。

 

三 活動状況

直ちに資器材(空気呼吸器・検索ロープ・照明器具・予備ボンベ・携帯無線機・エアーライン等)を準備し入口から四五m付近に前進指揮所を設け資器材を搬送した。

前進指揮所から隊員二名が第一の隔壁(高さ一・八m)を越え進入した所で作業員一名を発見呼びかけに応答したので、予備ボンベにより空気を供給した後、隊員二名が介添えし救出した。

更に、隊員二名で第一の隔壁を越え二m進んだ所に第二の隔壁があり中央部(幅六〇cm幅四〇cm)の通行孔を進入、第三の隔壁(高さ一・八m)を乗り越え第四の隔壁部に到着、隔壁を確認した所幅四〇cm高さ六〇cmの通行孔二か所があり、その奥を照明で検索すると作業員が意識もうろう状態でいたので隊員が通行孔を進入、エアーラインにより空気を投与、第四隔壁と第三隔壁の空間まで救出、その後は隊員四名で抱きかかえ搬送により前進指揮所まで搬送し、スクープストレッチャーに収容、箱桁入口まで搬送したが出入り口が狭くストレッチャーに乗せたままでは救出が困難なため縛帯を着装し、ロープにて引き揚げ、救助を完了した。

 

 

 

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