船用油こしの強度実験及び数値解析結果
運輸省船舶技術研究所大阪支所
艤装研究室主任研究官 伊飼通明
1. まえがき
こし器は、燃料油、潤滑油、海水等に含まれる不純物を取り除く機器であり船舶に多く使用されている。こし器には、水こしと油こしの2種類あり、今回の実験に用いたこし器は油用のもので、船舶内の燃料油配管系等に用いられているものである。油こしには、単式と複式があり、今回実験に用いたものは予備のこし筒が付いた複式のH形油こしと呼ばれるものである。本研究は、JIS F 7208船用H形油こしの見直し改訂時に口径25A〜40Aについてメーカー間の統一した新規規格化の要望を受け、規格化原案を作成すべく、機関部会配管ぎ装品専門分科会のこし器関係の委員が中心となって、強度実験、解析等(1)を行ったものである。実験等は、平成11年8月に配管ぎ装品専門分科会の委員の立会いの下に性能実験、限界強度実験等を行い、平成11年9月に同分科会のこし器関係の委員の立会いの下に強度実験を行い、さらに同年9月と平成12年3月に追加実験を行ったものである。本報告は、これらの実験の中から、強度実験と破壊実験及び数値解析についてまとめたものである。
なお、本報告書は、平成12年6月22日に行われた船舶技術研究所の平成12年度研究発表会に発表されたものである。
2. 実験
図−1に油こしの概略図を示す。船舶に使用されるこし器の特徴は、航行中に目詰まり等からこし筒の清掃を行う頻度が高く、作業性の良いこし器が要求される。このため、ふたの形状をフランジ式の構造とせず、図−1に示すような「ふた押さえ」でもって締め付ける構造となっている。この構造では、ふた押さえの湾曲部及びふた押さえのつめが当たる本体側に大きな力が集中すると考えられることから、これらの部分に注意しながら設計、実験等を行った。
実験に用いた油こしは、5K-40A(圧力0.5MPa用のフランジを有するこし器で、使用圧力0.4MPa、呼び径40mm)のものであり、材質は、本体がFC 200、ふた押さえがFCD 450(破壊実験はSS 400のものを使用)、ふたがFCD 450のものである。
2.1 強度実験及び解析
2.1.1 ボルト締め付けトルク作用時
こし器は、ふた押さえのボルトを締め付けることにより、ふたを本体に押し付けて使用される。
そこで、強度実験は、まずボルトを締め付けたときに、こし器とボルトにどの程度の応力が発生するか調べた。実験は、ボルトの先端に29.4N・m(3kgf・m)から98.1N・m(10kgf・m)まで、トルクを徐々に上げて行った。
共同研究者
運輸省船舶技術研究所大阪支所長 綾威雄
川崎重工業(株)坂出工場造船設計部艤装生産設計グループ長 花崎襄
水野ストレーナー工業(株)常務取締役生産部長 西岡成憲
水野ストレーナー工業(株)生産部技術・管理課長 松本克也