旨の報告が入り、テクニカルWGで特に発言を求め、このことに関して、賛成した国の、ドラフティンググループへの参加を要請する発言をした。議長も特に認識し、各国委員に呼びかけ、本会議への報告書に記載した。又、個別に、ノールウエーと米国の委員に、国に持ち帰ってナショナルコミッティーに本件を伝え、早急に事務局に参加の意思表明をするように直接依頼した。
(事後注:要望に応じて参加の意思表示をした国が増えNWIが成立した)
THDの技術基準は、ISO/TC 8/SC 6の下のWGで作成することになるが、地磁気を利用したもの(ISO/CD 11606)は継続して生かせるものと思うので、シリーズ規格として、ジャイロコンパスを利用したもの、GPSを利用したものに分けてISO国際規格が作られるのが良いと思う。日程的にはタイトなスケジュールになると思うが、テクニカルWGの議長からもISOの作業が遅れないようにアドバイスがあった。
2-5 新性能基準案の内容
この基準案は、対象船型が300総トンから500総トンの船舶を想定しているが、将来大型船の方位検出技術にも、考え方として影響する素地を持っている。古い規格、新しい技術、多様な用途を考慮すると、既存規格に話題が波及することも考えられる。
THDの性能基準案は本会議で採択されたので、あとは今年11月から開催されるMSC 73の承認を得る手続きが残っているが、最終案を仮の和訳したものを、参考に添付する。【添付資料2】参照
3. おわりに
これまで、一連のSOLAS条約第V章改正会議の技術的な面で関わってきたが、個々の航海・通信機器関連案件は、船全体から見たら些細な部分ではあるが、一つ綻びると大きな事故につながるコストパーフォーマンス大なるものである。V章はこれを担っている。
今回の方位信号の問題にしても、政府レベルから見れば、話題としてもっと重要案件が多い中で、これのみ注視しているわけにはいかない範疇のものであろうと思われる。こんな事情の中で、業界の風潮としては、お役所が面倒みてくれる、誰かが何とかしてくれる、決まったら仕方ない、“ダメ元”で反対してみる、自社には関係ない、と云った全体役割意識の薄い傾向が見受けられた。
TMHDの問題点は、これまでも提言しなかったわけではないが、大詰めにきてやっと問題意識がクローズアップされてきた。
民間がやるべきこと、政府がやるべきこと、学者がやるべきこと、それぞれに役割分担がある。まして規制緩和や行政改革等で民間自体の努力も必要になる時代、標準化・基準化はわれわれ自身の問題である意識を持つことが大切だと思う。草案を作成し、提案して初めて利用者の評価、行政判断が成されるものであると思う。
規格・基準は文書の一人歩きと言える。作成過程で何と云おうとも、意見が文章に反映されていなければ意味がない。(財)日本船舶標準協会がISO/TC 8の幹事国として国際舞台に立っている現状、まだ終ったわけではないが、THD論議を通して、民間の積極的な規格作りへの参加の必要性を痛感した。
IMOの性能基準を提案した国として、ISO/TC 8の幹事国の一員として実効ある国際規格完成を期待している。これからも、一山二山も難所があるものと覚悟しているが関係者のご協力をお願いしたい。