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テクニカルWGにおいては、まず議長より、日本の入力文書に対する貢献の謝意と共に全体説明を促された。

特別に用意した、“利用者要件とセンサ比較/想定し得るシステム構成/許容誤差考察背景”の【添付資料1】を配布し、これに基づき基準案の全文を説明した。

特に今回の案件の難しい点は、一度性能基準が正規の手続きを経て(最初の、“ボタンのかけちがい”のまま)成立しているものであり、何百人もいる委員団の中には“何でいまさら”という意見や、“何とかなる”と思っている人、“無関心”の人等に先ず理解を求めること。技術的内容について合意を得ること。を短時間の内にやらなければならず、事前に、主要国のオピニオンリーダーに日本の提案内容を理解してもらい、入力文書を支持してもらうためにCIRM(国際的機器メーカーの団体)の関連メーカーのキーマンと意見交換をし、問題点を洗い出しておいた。この効果もあってか、危惧した反対意見も質問もなく、本会議、テクニカルWGとも基本的に承認された。許容誤差の表現と数値については、CIRM、英国、ドイツに意見があり、別途論議しようと言うことになっていたので、小人数の専門家によるサブグループ(SG)で詳細検討をすることを併せて提案し、了承された。

SGは、日本をリーダーとして7名が参加、テクニカルWGの会期中の、11日17:00〜20:30、12日13:30〜14:30、13日09:00〜10:00に3回の打合わせを行い、新性能基準案を完成させ、テクニカルWGに報告した。

地磁気に限定したTMHDも含め、全てを網羅する性能要件とするには、センサの方式によって誤差の性質も異なり、試験方法も異なるため、この点に論議が集中した。

磁気センサ方式に関しては、Dynamic errors (動的誤差)の試験が難しいとのことで、除外の要求もあったが、このIMO性能基準は“User requirements”利用者要求を優先して満足させるべきもので、フットノートに、まずは現行の磁気コンパスの性能要件を満足させ、別途の試験方法(ISO)を適用することとした。

又、試験方法について、ドイツのBSHは接続するものは全て検査対象とすることが多いので、全体で試験するように記載すべきとの意見もあったが、わが国(運輸省安全基準課)の2重検査を避けTHDだけを対象とする方針を配慮し、“接続”のみを条件として、一体型のみ全体の試験をする表現とし、もしBSHが接続したセンサを一緒に試験することがあっても抵触しないような表現にした。(4.3.1項)

新性能基準案はテクニカルWGの報告書のAnnex 6として本会議に報告し、承認され、採択のためMSC 73に送られることとなった。提案発効日は2002年7月1日でMSCに申し入れる。

 

2-4 ISOの役割

船舶に関しては、IMOの決議と、国際工業規格としてのISOあるいはIECの機器規格が密接な関係の組み合わせで国際標準を形成している。

このことはSOLAS条約国では強制法規として引用されるケースも多い。ちなみにIMOで強制している機器のISO規格では、ジャイロコンパス、磁気コンパス、音響測深器、ヘディングコントロールシステム(改正V章から適用)、など型式検定基準として取り込まれている。

THDに関しても、機器の検査基準については、性格的に、方位信号検出原理が異なるため、試験方法は原理別の扱いをする必要があり、役割分担として、ISO規格に委ねる部分が出てくるため、特別に、IMOとISOに技術基準作成のための協力要請が議事録に記された。

余談になるが、今回の会期中に(財)日本船舶標準協会(ISO/TC 8/SC 6事務局)から、ISOのNWIP (新業務項目提案)の投票結果で、賛成多数で支持されたものの、規格作り作業グループに参加の意思表示をした票が規定数に満たないため、成立が危ぶまれている。

 

 

 

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