EPAを除くこれらの装置には、共通の真方位の信号が必要とされる。
NAV 44会議に先立って一部のメンバーが話し合い、20規則案の1.4.1項で要求するもの(注:上記のRADARとAIS)は、真方位を必要としないであろうと認識した。MSCは、舶用電子磁気コンパスとトランスミッティング磁気コンパス(注:いずれも地磁気の磁北を指すもので地球の真北を指すものではない)が、共通に使用する機器の性能要件を満足するのに適当か否か、を検討するようにNAV 44に指示していた。
NAV 44のテクニカルWGでは、前記のメンバーが充分に検討したものと解釈し、特に審議せず、単独の性能要件では適切であろうと結論つけ、MSCで採択されるよう基準案を上程した。
こうして、300総トンから500総トンまでの船舶には、方位センサとして、トランスミッティング磁気方位伝達装置(TMHD)が、来るMSCで採択されるべく性能基準案IMO NAV 44/14 ANNEX 17 ANNEX 2として指定され、採択された。同時に、電子磁気コンパスの検査方法の基準は、ISO/TC 8/SC 6のコンパス委員会で、ISO/CD 11606案として作成中であった。
2-2 必要なものは真北方位信号
RADAR及びAISが要求する真方位入力には、候補に上げられているTMHDは地磁気を利用した磁気コンパスに限定しているため、付加装置なしでは真方位を得られないものである。さらにIMOの性能要件で磁気方式に限定することは、今後の技術開発促進を阻害し、及び、従来から実績があり、安全航海に寄与してきている在来技術を排除することにつながる。NAV 44では、別に、船首方位センサに関して、幾多の応用技術が考えられることから、これらの種類を、前記の3つのカテゴリー、すなわち1]地磁気を利用したもの、2]独立したもの、3]電波を利用したものに分類して認識している。
方位信号を受ける機器側の要求条件を検討した結果、当該性能要件では、これらのあらゆる技術の可能性を考慮しても、Magneticに限定することには再考を要することとして、500総トン未満の船舶に装備する機器が必要とする真方位信号に適用し得る伝送方式に関する性能要件として規定するよう、IMOのTMHD性能要件案の、修正の必要性を指摘した。その上で、IMOは、性能基準をTHDとし、リンクして、その機器規格をISOにて作成するように指示すべきである、と考える。と提案した。
(これは、(財)日本船舶標準協会が、磁気コンパス委員会委員長鈴木裕氏、ジャイロコンパス委員会委員長庄司和民氏の連名で運輸省に提出し、MSC 72に提案した提案文章の骨子である)
これにより、MSC 72で採り上げられ、NAV 46にて検討する項目に加えられ、作成した性能基準ドラフトは、入力文書NAV 46/7/2として提出された。
【添付資料1】は、NAV 46のテクニカルWGの席上説明用に配布した資料である。
最初の部分は、総トン数別搭載義務と要求される性能の比較表であり、2番目は、考え得る機器構成の例で、センサ部分が別の構成と一体構成の2つのケースの例であり、及び真方位補正機能付か否か。3番目は、精度・許容誤差を決めるにあたってレビューした現状の各基準で決めている誤差範囲の比較資料である。
2-3 合意成立
本件に関する入力文書は日本提案のみであった。
日本提案の性能基準案であり、本会議にて議長より提案説明を求められ、提案理由と概要について説明し、これは前記のカテゴリーの方位検出原理を網羅し、現在及び将来技術に対応し得るはずである旨の説明を行い、許容誤差などの詳細については、テクニカルWGあるいはサブWGで検討するように、WG-Bの議題とすることを提案した。