磁気コンパスに関するISO国際規格(2規格)の発行について
財団法人 日本船舶標準協会
標準委員会 航海機器部会
磁気コンパス専門分科会長 鈴木裕*
ISO 613-1982造船−磁気コンパス、ビナクル及び方位測定具−クラスBとISO/R 694-1968船用磁気コンパスの装備位置が見直されて、2000年2月1日に、それぞれ、ISO 613-2000船舶及び海洋技術−磁気コンパス、ビナクル及び方位測定具−クラスBとISO 694-2000船舶及び海洋技術−磁気コンパスの船内装備位置として発刊された。その過程について、主に技術的な面から、概要を述べたい。
I. ISO 613-2000船舶および海洋技術−磁気コンパス、ビナクル及び方位測定具−クラスB
ISO 613は当初1982年に発行され、1991年に章節が12カ所も改められて、ISO 613:1982/Cor.1:1991(E)として刊行された。5年ごとの定期見直しということで1996年に向けて我が国によりDraftが作成された。この見直しは6.3.3静止時間の規定、6.5.5方位測定具の装着中心の誤差、自差修正用磁石の材質、ビルトイン磁石の不要傾船差発生などが検討された。
オランダからは総則の中に、この規格では、プレジャーボート用コンパスを除くように記載すべきであるとの意見があったが、これはノートを追加して、24m以下の小型船舶に対してはISO/DIS 14117(小型船磁気コンパス)がカバーするので、この規格では触れないと規定した。ドイツの意見のうち、コンパス液の予備を付属させる、もしくは、入れ替えをメーカー扱いとするという案は実際上、困難であるとして採択しないことにした。また、アルコールの濃度を明記すべきであるとの意見があったが、これも、およそ決まっているため採択しないことにした。また、磁気コンパスの周期について追加規定すべきであるとの意見に対しては、ISO 449(クラスA磁気コンパス)から規定を削除した関係で追加しないことにした。
SC 6(航海分科委員会)Pメンバー13カ国による投票は1996年12月20日から97年3月31日まで行われ、デンマークと英国が反対し、ブラジル、ブルガリヤ、韓国が棄権し、8カ国が賛成した。賛成が67%を超えたのでこの案は1997年4月17日に承認され、1997年9月19日にISO/CD 613としてISO/TC 8/SC 6メンバーに回章した。これに対してISO中央事務局から大幅な編集上の意見が提出されたが、その大部分は受け入れられるものであったので、SC 6事務局(財団法人日本船舶標準協会)と本件の原案作成責任者(磁気コンパス専門分科会長)で審議し、日本意見としてまとめた。1999年5月3日回答期限で最終確認のための投票が行われた。同投票は反対国がなかったので、その後、2000年2月1日にISO 613-2000(船舶及び海洋技術−磁気コンパス、ビナクル及び方位測定具−クラスB)として正式に発刊された。
*東京水産大学名誉教授
II. ISO 694-2000船舶及び海洋技術−磁気コンパスの船内装備位置
ISO推薦規格ISO/R 694船用磁気コンパスの装備位置は1958年に規格作成作業が開始され、1965年にISO推薦規格原案に採択され、アルゼンチン等19カ国によって承認され、日本、フランス、ドイツ、イタリアの4カ国は反対した。