2.6 運航過程のエネルギー等の入出力フロー
調査した本船の運航過程におけるエネルギー等の入出力状況を図4に1年当たりの値で示す。NOxの排出係数はシップ・アンド・オーシャン財団の報告書の値を用いた。
廃油は、(社)日本船舶機関士協会による報告書(平成10年度技術委員会報告書「船内廃油処理に関する調査研究」)では、燃料消費量の0.71%を発生する。しかし、焼却炉、補助ボイラ、主機によって97%は船上で焼却されており、灰分が固形物として排出されると考えられる。
2.7 課題等
モデルシップに相当する載貨重量約96,000(t)のタンカーの運航記録をもとに実際の運航パターン、燃料潤滑油の消費状況を調査した。これらのデータをもとに貨油輸送量に関わるインベントリを分析した。
単位輸送量当たりの主機関燃料消費量の推定に関しては、計画時速力、排水量、常用出力をもとにしたアドミラルティー係数に実際の運航条件を考慮した修正係数を施すことで妥当な結果が得られることを示した。
しかし、20年程度と長期間使用される船としては運航記録が限られていた。経年的な影響について実証的に検討しておく必要がある。
貨油積載率は、経済経営上の課題でもあるが、単位輸送量当たりの燃料消費量の推定に直接的な影響を与える。従って、いつも満載状態で燃料消費量を推定することは、実際より単位輸送量当たりの燃料消費量を少なく推定することになるので、より実際的な仮定を入れる必要がある。
補機動力源である発電機、補助ボイラの燃料消費量が約30%を占めた。これらの稼働状況の把握が重要である。特に今回調査した船は不定期船でもあり、日本に入港するタンカーとしては運航パターンがかなり特殊な場合とも考えられる。停泊日数は、荷役容量から計算できる最小必要時間をかなり越えた日数となっている。仮泊日数とも併せて検討を要する。また、貨油加熱の頻度が高いのも特殊なケースのようである。日本に入港する典型的なVLCCなど他のタンカーの運航パターンも調査してより一般的な状況を把握する必要がある。
3. おわりに
船舶の運航過程におけるインベントリ試分析を行った結果、いくつかの問題点が指摘されている。それらをまとめると、次のように言える。
・運航形態については、様々であり、一般論では極めて荒っぽい議論となる。
したがって、多数のモデルシップを選定して、それぞれについて分析する必要がある。
・運航データについては、船社に詳細なものがあり、これを利用することが考えられる。
・研究で開発された手法を、上記のものに適応して、分析例を増すことが重要である。