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船舶へのLCAの適用

 

財団法人 日本船舶標準協会

業務部マネジメントシステム課長

相馬光久

 

1. はじめに

地球的規模の環境問題は、地球温暖化、酸性雨、オゾン層破壊、海洋汚染、有害廃物の越境移動、熱帯林の減少、野生生物の減少、砂漠の拡大、等々の危機にさらされており、環境保護への関心が高まっている。この様な中、製品に関する様々な活動が、地球環境に与える負荷が大きな問題となっている。製品が、環境に与える影響を評価する方法として、ライフサイクルアセスメント(LCA)がある。

LCAに関しては、製品やサービスのゆりかごから墓場(又は再利用)に至るまでのライフサイクル全体までのあらゆる段階で環境に係わる負荷を数量的に分析・評価し、最も負荷の少ない製品、生産方法、或いは、素材の利用などをみいだすための手法として期待されている方法の一つである。LCAの基本的な考え方や枠組みは、様々な研究・検討の結果、ある程度合意の得られるものが示されている。しかしながら、具体的にある製品に対してLCAを適用しようとすると、海運造船関連分野においては、未だ分析、評価する方法そのものが明らかになっておらず、ある程度の合意の得られる解釈の方向性といったものも見出されていない状況にある。

このような状況を受けて、環境基本計画においても、国の果たす役割の一つとして、「LCAの手法について調査研究を進めること」が示されている。

海運造船関連分野においては、事業所等における環境マネジメントシステムの仕様及び利用の手引きを定めた国際規格であるISO 14001の取得が進むなど、環境問題に対する関心は、高まりを見せているものの、LCA適用の実績はなく、その適用手法等も明らかになっていない。このため、LCAの適用手法を明らかにする必要がある。

本調査は、平成10年度から3年計画として運輸省の委託を受け、「LCA応用施策に関する検討調査」を行うこととなったものである。

平成11年度は3年計画の2年目であり、船舶の運航過程における製品のライフサイクルの各段階における原料、エネルギー等の入力情報及び製品や排出物等の環境への出力情報を詳細にリストアップし整理を行うインベントリ分析を実施し、環境負荷発生要素の検討を行うとともに、当該分野にLCAを適用する際の技術的課題を抽出することを目的として、運輸省船舶技術研究所との共同研究の下に、インベントリ試解析を行ったものである。

本稿は、1998年7月船舶標準225号「船舶におけるLCA」関連の報告であり、ISO/TC207における活動内容及びLCAの概要・構成については、船舶標準225号に記載しているため省略する。

平成11年度に行った検討調査内容のうち、「船舶の運航過程におけるインベントリ試解析」について報告する。

 

 

 

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