世は21世紀に入り、国家間の全世界的海上貿易が、国の経済よりも3倍から4倍速い率で成長を続ける世の中である。我々の目の前で貿易の障壁が倒壊してゆく。たいていの品物は、その場所でのみの使用のため、1つの社会内で生産されるということはも早やないのである。製品は、アジアで造られる部品を米国にて組み合わせて欧州で市場に出されるということもあり得る。また、我々は起源の場所から辿ってみると、港のターミナルを経て、船内に乗せられ、目的港で降ろされ、最終目的地までは他の輸送方式に移されるという(1つのモードの輸送から別方式のモードヘ変わるという)、いわゆる貨物及び補給物のつぎ目なき移行を確保する必要がある。インターモーダル方式は補給チェーンにおける鍵であり、貨物の85%超が国の間を海上輸送方式で処理される。
技術の急速な変化のため、製品のライフ・サイクル(見限られるまでの期間)はより短くなりつつある。船主は、その投資を保護することを欲し、そのため、承認された規格に適合する製品により大きな関心が払われる。規格は、新技術と軌を一にして作成しなければならない。規格は、進んだ技術を使うことができるよう、詳細設計よりは、相互互換性と性能とに焦点を合わせたものでなければならない。技術の進歩を適当な時機を選んで製品に織り込んでゆくため、船の設計サイクルは、短くなるであろう。現規格の内容そのものは、新技術が、現在の技術と、ビルディング・ブロック方式のやり方で結合することができるよう、要求される。我々が作成する規格は、高い品質と費用効果のある製品を規定すべく最高のレベルのものでなければならない。諸規格はまた、安全かつ効果的に、競争価格にて製造され、取り付けられ、使用され、維持管理することのできる製品を規定しなければならない。我々が直面する市場は、IMOの重要な規制要件を受けて環境上及び安全上の考慮に焦点が鋭く絞られている。
「遊び場の面を平坦(差別なし)にしてくれれば、全世界的造船の市場において、我々は、競争力を得ることができように…」なる言葉を常に聞くのである。我々が規格を調和させない限り、我々は、平坦な遊び場(差別なし)での業務を行えず、同等の貿易ができず、市場を解放することができず、また、貿易上の障壁を取り除くことができない。国際規格の使用だけが、国際海事社会のニーズを真に満足させるものとなろう。したがって、規格化は、戦略的事業決定であり、単に技術的のものではないことが自明である。
全世界的貿易と全世界的生産との間には強い連係がある。海上運送業のためからいえば、最も有望な成長因子は、生産場所と市場との間の距離を増す「製造の全世界化」である。新興国は、世界の他の地域に輸出する必要があるが、多くは、規格がないか、又は世界貿易志向というよりは国家のお役所主義で固めた規格を有している。当該規格は、古ぼけたものか、局地的であるか、又は方式が不必要に規制的である。
今日の規格は、単一の産業又は単一の国に限定された技術文書よりずっとましであるという風に認められている。ISO9000品質管理シリーズは、諸船級協会により採用されており、IMO国際安全管理コードは、ISO9002に基づいているのである。品質と環境の管理システムに係るこれらシリーズの規格に着目してみると、安全と環境の評価の基礎というものがあって、その上に立って提案されるルールの適正評価が行われている。
2.2 事業環境の量的指標
量的指標に関する次の一覧は、ISO/TCの活動を支える上に適当な情報をもたらすための事業環境を説明するものである。
海運及び造船部門における国際貿易に係る金銭的価値($USD)の推定は可能であるが、船種の多様性は、経済的成長又は衰退を決定する上に、よりよい経済上の代替指標(業界側が用いるもの)となり得る。諸要件は、総トン数、必要とする停泊地、コンテナ船用のTEU(コンテナ容量)、冷蔵船における容量としての立方フィート、LPG及びLNG運搬船に係るcbm等について定められる。船令、船の状態等の他の因子は、シングル・ハルのタンカーに対するダブル・ハル・タンカーによる代替の場合と同様に、スクラップ化の市場規模を決める。2005年までに、ばら積み船隊(タンカー及びばら積み船)の約3分の1が入替えを求められよう。
世界の造船所は、これから何年かは、その船台での仕事が予定される。そして船主は残っているものの確保に奔走する。しかし、造船所がどんどん新船を造り出すと、かかる造船所は、10年来の低価格の値段で争うこととなる。一部の政府が実施する各種の補助金は、真のコストをねじ曲げる役をするのである。
造船市場においては、世界の注文の予約は、総トン数で約5千8百万トンである。そのうちアジアが4千2百万トン、欧州が1千3百万トンである。そして3百万トンがその他の地域となる。欧州の注文は、この3年で50%近くも低落した一方、韓国の注文は25%超の増加を示し、中国の注文は、3倍超(330%)となった。