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そしてこれらは、関係規格の作成過程がいかに行われているかということと、その結果としてできる規格の内容とに大きな影響を与えていると考えられる。

このセクションは、ISO/TC8の主要な関係先と、市場のニーズについて記述する。関係する業界は、国際海運及び造船であり、そこには造船者、船舶修理者、船主、船舶運航者及び海事関係供給者がある。関係する主たる政府組織は、155の加盟国で成り立つ国際海事機関(IMO)であって、当該機関は、海事産業が、海上安全、航海の能率並びに海洋汚染の防止及び管理に係るできるだけ最高の基準を整備するため要件及び規則を設定する。IMOの主要な国際条約は、SOLAS(海上人命安全条約)、MARPOL(船舶からの汚染の防止条約)及びSTCW(船員訓練、資格証明、当直基準条約)である。このように、我々の関係筋としては、一方においては、要件を取りまとめ、規則を制定する責任にある規則関係組織体であり、また他方においては、全世界的海事産業である。

 

「求められている全世界レベルの安全性と環境保護を達成すること」と、「海事産業が新規の技術を適用するのに十分な自由度をもって平等な競争条件(不公平のない活躍場所)を保持すること」との間において「よく均衡のとれた最良点」を達成するにはどうしたらよいのであろうか。我々は、「よく均衡のとれた最良点」を達成するに当たり重要なことは、例のI(Iを頭文字とするもの)の存在を認識することにあると考える。このIは、「integration」(統合)の中にある。ISO/TC8の戦略と目的は、このビジネスプランの「戦略と目的」(セクション 6)にて議論を行ったIMOと産業(Industry)との間のかけ橋の役目となることである(IMOとIndustryはIが共通してある)。この戦略の実施を効果的とするためには、IMOとISOとの間に統合(結びつき)のための「I」を必要とする。したがって、我々の市場の要求に合うため、我々は、IMO、ISO、Industry(産業界)及びIntegration(統合)という頭文字にIを共有するしっかりした主柱に乗っかった堅固な屋根を築き上げた。IMOとISOとの間の緊密な協調により、「要件」は、その内容を収めた基盤として技術的規格を用いて確立することができよう。両組織の資源(人的及び物的)は限られてはいるが、そのような方法を用いることにより、「最良のもの」により近づくことであろう。ISO規格の採択に際しては、業界による参加の機会がおおいに提供されるであろうし、また、その採択は、業界自身のため自身により作成される「技術的、自主的、コンセンサスの規格」を要件樹立の過程において検討してもらうためその機会を提供することとなる。

 

巡航船、コンテナ船、冷蔵船、ロールオン・ロールオフ船、乾ばら積貨物船、液化天然ガス運搬船(LNG船)、液化石油ガス運搬船(LPG船)、タンカー、オフショア・マーケット船(FPSO、FSO及び支援船)その他各種船型かあるが、海事産業は、「船型」と「個々の市場各部門」とが複合し、混合した存在である。運航状態は、大洋航行船、短距離海運船及び内陸航行船とあり、多様である。これら船型それぞれは、それに応じた特別の要件があり、国際水域において運行するものは、IMO規則に従わなければならない。

造船についていえば、市場は、「市場の大部分を制するアジアの造船者」、「各種ニッチ・マーケット(すきま市場)にしがみつこうとしている欧州造船者」、及び「今巡航船市場に参入しつつある米国」との間に分別される。

 

多くの業界におけるように、海事産業である荷送者と造船者双方は、重要な(企業)合併と(企業)買収を行っているところである。

これから数年の間にシングル・ハル・タンカーを廃し、ダブル・ハルに代替するとする要件のため、市場における2つの主要な影響が起こっている。すなわち、(1)かなりの環境への配慮と規制措置を必要とする船舶のスクラップ化、及び(2)代替タンカーの新規建造である。事実、ダブル・ハルの要件は、造船所全体の全世界的能力を超すと考えられる。

安全と環境の規制は、重要性を増しつつあり、より厳しい船級ルール及び検査は、非合法的な国、基準未達の船舶輸送及び沈没への対策として、執行されれている。

港のターミナルでは、「より速い船の回転率」と「インターモーダル(異質方式間)の輸送の切れ目のない移行に、より大きな注目が集中していること」とに備えて実質的な変化が現れている。また、新たな高速船型と短海上輸送、連絡船及びメガヨット(巨大ヨット)の増大とに対処する必要性もある。

バラスト水管理、陸側受入施設及び溢出油回収を取り扱うための国際的規格が、実質的に求められている。

 

規格を有益なものとするためには、これらを現在の事業傾向に合わせることが肝要である。

 

 

 

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