6) 安全に関する機能
ジョイスティック操船装置を安全に運用するために設定されている機能例を以下に示します、
(1) 切換条件 通常操船からジョイスティック装置に安全に切り換えるためにインターロックと呼ばれる色々な条件が設定されている場合があります。
a. ジョイスティックのレバーが中立でなければ切り換わらない。(切換と同時に急にレバーの方向へ船体が移動してしまうことを防止する)
b. 主機関がアイドル回転数となっていること。FPPではクラッチ脱となっていること。
c. CPP、FPP、舵、スラスタの操縦方法がリモートに切り換わっていること。(通常ジョイスティック操船装置は制御回路上でリモートコントロール回路の一部となっていることが多い)
d. 切換前のCPP、スラスタ翼角および舵角が中立・中央であること。FPPではクラッチ脱となっていること。(レバーが中立が条件であると、急激に負荷が変化し主機関に悪影響を及ぼしたり、意図しない船体運動になることを防止する)
e. ジャイロやGPSの信号が正しく装置に取り込まれていること。
(2) 保護機能 ジョイスティック操船装置には各アクチュエータへの保護機能を設けたり、著しく頻度の多い指令変更を行わない等の機能を追加している場合があります。
a. 各アクチュエータ作動最大値以下を出力最大値と設定する。
b. 外乱等により船体の状態変化が激しい場合でも外乱要素にフィルターを掛けたり、過度の反応をしないためのゲインの設定があります。
(3) 異常処理 ジョイスティック操船中に故障が発生した場合、安全に通常操船に戻る機能が設定されています。通常操船(個別操作)に戻る場合には切換前の条件(翼角や舵角が中立や中央)なので、通常操船に切り換わっても突然船体が異常な動きをすることはありません。但し、通常操船に切り換わる前に船速があった場合等には、切り換わり後に直ちにその動きを補正する操作を操船者自身で行わなければなりません。
a. ジョイスティック操船装置自体に異常が発生した場合。(ケーブルが外れたり、プログラムやデータの読み出しに異常が発生した等)
b. 各アクチュエータへの指令値と指示値に著しく違いがあり異常と見なされる場合。
c. ジャイロやGPSの信号に異常が発生した場合。
(4) 終了処理 ジョイスティック操船中から通常操船に戻す場合にも安全に関する機能が設定されている場合があります。
a. ジョイスティック操船中のCPP、スラスタ翼角および舵角が中立・中央でなくても、通常操船に戻すと各アクチュエータが中立・中央となる。
b. 個別にアクチュエータを操作する必要が生じた場合、1つのスイッチの切り換えで個別操作が可能となる。