日本財団 図書館


この為、リスクアセッサー、設計者、評価者の関係が適切に維持される必要がある。特に重要な機械は第三者認証機関による正式の証明(認証・システム評価)が求められている。公平性を安全の説明責任とする認証制度が既にEUで開始されている。設計者による安全対策の「受容」の判断を被害を受ける側にかわって第三者が行うシステムであり、あくまでリスク評価に基づく許容安全への低減策が公平性を満たすと判断する。

この公平性の原理をどこに求めるかは演繹法、帰納法、確率手法等さまざまな合理的手法がある。この中で決定論に根拠を求めるとすれば、製造物責任法に基ずくと考えられる。労働省産業安全研究所・杉本旭研究官が示しているPLによる公平性原理のステップは次によるとしている。

危険の公平分担の原理における三つのステップ

(1) 製品(機械)は、消費者にたいして損害を与える危険性を内在しているから、これにより生じた被害はこの製品の利便性を享受するすべての利用者が公平に分担する。

(2) 現代文明が技術とともに発展することを認めるのであれば、最新技術による生産物に内在する把握不明な危険性は製造者と使用者の間で公平に分担する。

(3) 安全のために必要な手段は等しく準備する(イコールフィッテイングの概念):安全性側面に於いて製品が安いから、又コストを抑える為、最低限のシステムとするという従来的手法・説明は難しい。安全に関して先進国・後進国の差異を無くすことが大切である。

 

ISO12100(機械安全についての基本規格)においては、次の予見可能な誤使用を含めて設計者の責任で設計段階にて対応・検討すべき事項が既述されている。この対策により始めて許容安全確保が創出されるとする。

(1) 一般的な不注意から生じるものばかりでなく、機械を用途外に使用した結果生じる予見可能な間違った挙動。…安全装置の解除

(2) 機械使用中に機能不良、事故、故障等が生じた場合の人の反射的な挙動…ちょこの手、咄嗟の進入

(3) 作業実行中、「最小抵抗経路」をとった結果として生じた挙動

(4) ある種の機械(特に、非専門職が使用する機械)にたいしては、子供又は障害者のような人が取る予見可能な挙動 公平性

(引用、杉本旭、安全工学:機械安全の原理とヒューマンファクター、1999-v38-NO6)

 

制御されるシステム(EUC)が危険側へ失敗した場合、システムと分離・独立した明確な安全関連系(SRS)の設置により安全が基本的に確保できるが、安全がある程度人間の信頼性に依存するシステムにおいては、安全はシステムの自動化機能・信頼性(ユーティリティー)、ユーザビリティーレベル(使い易さ;絶対値はない)、各種防御装置、性能の余裕、時間的余裕、危急時の対応策、管理システム、人間の信頼性等の総合性のもとに構築される。この様なシステムの場合のPLPは、国際的安全規格概念から次のステップを導入する必要がある。この手法により許容安全性は確保できると判断される。EN規格の性格はこの主旨から製造者の責任範囲を限定している。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION